2024年以降の半導体市場の見通しは?需要や各国の動向について
製造業
製品開発にしろ、事業開発にしろ、業務を進めるなかでいくら万全の準備を行っても、何かしらの問題は起こってしまうものだ。その問題に対して、素早く状況を判断し次の方向性を定めてスムーズに行動を起こすことができるかどうかが、資源や時間が限られるなかでとても重要なことである。
この記事では、迅速な意思決定の一助となる「OODAループ」思考法について解説する。OODAループの基本的な考え方や進め方をご覧いただき、ぜひ試してみていただきたい。
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目次
OODAループは、米国の航空戦術家だったジョン・ボイド氏によって発明された意思決定の手法で、先の見えない状況下においても迅速に意思決定を行い、迅速に行動に移すための方法だ。どんなに不利な状況からも40秒で形勢逆転させたというジョン・ボイド氏が、軍役を引退後、人間の意思決定に関する研究の末に辿り着いたものだ。
OODAループは、以下の英単語の頭文字を取っている。
・Observe(観る・情報収集)
状況を観察して情報収集を行う。先入観なく、視点を変えつつ、できるだけ多くの情報を得るようにする。
・Orient(解る・方向性の判断)
観察で得た情報と自身の価値観を照合し、状況を理解して、行動の方向性を判断する。
・Decide(決める・具体的施策の決定)
具体的な行動について直感的に決定する。状況に応じて分析を加える。
・Act(動く・行動)
決定した施策を実行する。状況に合わせて柔軟に行動する。
これら4つの動作を一連とし、各ステップを繰り返していく。OODAループの特徴には、ループのどの段階でも外的変化があった場合は前の段階に戻ることができ、生じた状況に沿った方針転換が可能な点が挙げられる。この一方通行ではないという特徴が、状況に柔軟に対応できる思考法と呼ばれる所以である。
ではなぜ、OODAループが注目されているのであろうか。ここでは、OODAループがビジネスにおいて重要視されるようになった背景について解説する。
現代社会はさまざまな面において正確な予測が困難な時代となっている。併せて、企業を取り巻くビジネス環境についても非常に不安定になっている。
特に通信速度が1990年の1Gと比較して、2010年代の4Gは約10,000倍以上に著しく向上していることからもわかる通り、情報通信社会は急速な発展を遂げている※1。このような背景から、情報の駆け巡るスピードは加速し、それに伴いAIやITなどのテクノロジーも日進月歩の進化を遂げ、製品のライフサイクルの短命化、市場の国際化などで競争が激化し、ビジネス環境はこれまでにない速さで変化している。
このような環境下では、その時々の状況に応じて素早い判断を下し、意思決定するスキルがますます重要となっているのだ。
この状況は、ものづくり産業である製造業にも強い影響を与えており、研究開発に取り組む方々も実感する場面が多いのではないだろうか。さまざまな市場で競合製品が多数存在し、顧客ニーズも複雑化しており、事業貢献につながる研究開発を進めるためには、今まで以上に市場や社会状況を意識する必要がある。その時々の状況に応じて素早く判断をし、意思決定していくことが求められるなか、これまで広く活用されてきたPDCAサイクルだけでは対応できなくなってきているのだ。PDCAサイクルは製品管理といった管理に主眼を置いたフレームワークであり、既に枠組みがある中で生産性を高めることを長所としているためだ。
こういった理由から、変化する市場やニーズ、社会状況などの現況の観察を起点とした意思決定プロセスであるOODAループに注目が集まっているのだ。
OODAループとPDCAサイクルにはどのような違いがあるのだろうか。ここでは、2つのフレームワークを比較してみる。
そもそも、PDCAサイクルとは工場などでの生産性を高めるために開発されたフレームワークである。Plan(計画する)、Do(実行する)、Check(評価する)、Action(改善する)の4要素のサイクルを回すことによって、業務改善を達成することが目標だ。
また、PDCAサイクルは、達成すべき目標が明確であること、さらに、事前に綿密な計画を立てることが前提のメソッドといえる。このことから、状況そのものが不安定で、見通しが立てにくい場面では活用しづらいことが指摘される。
PDCAサイクルは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Act(改善)の順にサイクルを一方向に回すことが基本だ。
一方、OODAループは、一方向だけでなく、必要に応じて途中で前の段階や任意の段階からループを再開することもある。
PDCAサイクルでは、自社または社内の部門にとって最適な管理サイクルを構築し、生産性を向上させることを目的とする。このため、自社、部門内が始点であり終点となる。
一方、OODAループにおいては、Observe(観る・情報収集)が始点のため、社内環境だけでなく、業界や市場など外界の要素からループがスタートする場合がある。
OODAループは、内部的な要素に留まらず外部要素を含めたさまざまな視点を持ち観察することが前提となることから、PDCAサイクルと比較して自由度や柔軟性が高いといえるだろう。そのため、状況判断のために適切な観点を持つことや、集めたデータの情報を正確に分析することなどが最適な意思決定を導くためにとても大切である。自由度や柔軟性が高いがゆえに、対象とする環境が複雑になればなるほど情報処理の難易度が高くなるともいえる。
OODAループとPDCAサイクルには、それぞれの特徴があり手法自体に優劣はない。特定の問題をクリアする場合や望む結果をいかに出すかといった業務改善を図るような場面であればPDCAサイクル、状況が不明確、または変動的であるような場合は、OODAループというように、それぞれの状況や目的に合わせて使い分けられることが理想である。
今の問題は何なのか、どのような解決を求めているのかを明確にすることで、それぞれの思考法の使い分けがしやすくなり、合わない思考法に苦慮することが減るだろう。
では実際にOODAループはどのように用いるべきだろうか。以下、それぞれの段階について詳細に解説する。
状況についての情報収集を行う段階であるが、特に意識して多くの情報を得ることが肝要である。技術や自業界に関する情報収集はもちろんであるが、社会の動向はどのように変化しているのか、市場や顧客の動向、ニーズの移り変わり、また今後参入してくるような新たなプレイヤーの情報など、他業界も含めて網羅的に取得する必要がある。情報収集の際には、先入観を捨て、さまざまな視点から物事を観察することが求められる。また、現在や過去だけでなく他企業の今後の動向を追い、未来を意識して先行きを予測していくことも欠かせない。
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次の段階は仮説構築のステージだ。ここで、自身の持つ経験や知識などと、前段階で得た情報をつなげ、分析を行い仮説を構築する。この仮説が最終的な行動を決めるため、特に重要なステージだといわれている。
ここで重要なポイントは、これまでの判断、行動の誤りに気づけるかどうかという点である。OODAループは一度ではなく何度も往復することでより有用性が高まる手法であるが、誤りを正すことができなければ複数回ループしても効果は限定的である。
次段階のAct(動く) に向けて、何をするのか決定する段階である。立てた仮説に沿って、複数の選択肢から最大限の効果を得られる最善の行動を選択する。ここでこれまで予期していない事態が発生したり、状況が変わるようなことがあれば、前段階のOrient(解る)に戻って判断をし直してもよい。
決定した選択肢に従い、実際の行動に移す。行動後の状況に対し、また新たなループを開始することで、OODAループの1回転目を終えることになる。
研究開発でのOODAループ活用の一例を挙げる。
・Observe(観る)
顧客ニーズや競合の状況、社会環境の動向について情報収集する。
・Orient(解る)
集めた情報と自身の持つ知識や技術から、研究開発の目的や方向性を決める。
→市場情報と技術をつなげて考えるためのおすすめのフレームワークはこちら
・Decide(決める)
実際の研究の方向性、すべきことを決定する。製作の前段階の試作を行い、検討する。
→研究テーマ決定のポイントについてはこちら
・Act(動く)
実際に実行した結果どうだったのかをまとめる。その状況を視点として、新たなOODAループに入る。
以下の図は、カーボンニュートラルという社会動向を起点としたOODAループでの考え方の例だ。
ほかのフレームワークとの使い分けを効果的にするためにも、OODAループのメリットやデメリットもきちんと把握しておきたい。
メリットには以下のようなものがある。
OODAループの第一のメリットとして、起こった問題にすぐに対応できることがある。トラブルに対して、現場の担当者が即応できることは事業にとって大いにプラスとなるだろう。目の前の問題を担当者が理解して行動を起こすことができるため、スピーディーで効果的な対応を取ることができるようになる。さらに、データを元にして何をすべきか判断し、意思決定するスキルを磨くことができれば、事前のトラブル回避にも繋がるだろう。
OODAループは大人数での活用ではなく、個人やチーム単位など、小規模な人数での運用を前提としている。そのため、大規模な団体よりも個人の裁量が大きくなり、メンバー個々人の責任も大きくなることから、主体性がより求められるようになる。結果、OODAループは、社員それぞれが責任を持ち、現場に即した効果的な行動を選択して、主体的に動く環境や組織の構築に役立つといえる。
OODAループは迅速な意思決定のためのフレームワークであり、主体性を持って思考する手助けをする手法であることから、OODAループを繰り返し実践することで、自然と「さまざまな事象を観察、把握して、試行錯誤を繰り返し行う」ことが身につくことが期待できる。
デメリットと考えられるものを挙げる。デメリットを把握して対策につなげたい。
OODAループは、個人が裁量を持ち、主体性を持ってスピーディーに意思決定することが特徴である。この特徴はメリットであると同時に、個々人の主体性に任せすぎてしまうと、組織の方向性が曖昧になり、組織がまとまりにくくなってしまう可能性も生む。統率を欠くといったデメリットを回避するには、仮設段階での事前のすり合わせと定期的な方向性の確認を行うことが必要だ。
OODAループは「問題が発生している現状」から始まるため、特に問題が発生していない段階で効率化を狙うような業務改善には向いていない。また、素早く行動を繰り返すやり方のため、効果を見つつ長期的な視野で改善を検討したり、工程について見直しをしたりするような事業には最適とはいえない。そういった場合は、PDCAサイクルを利用した方が望ましい結果が得られるだろう。
組織でOODAループを活用する場合、自社の方針や部署の目的から外れることは避けたい。ここでは、OODAループを用いる際に気をつけたいポイントについて紹介する。
OODAループの強みは、「観察」というステップが含まれていることだ。顧客に関する変化がないか、市場に変化がないか、何がトレンドとなっているか、新しい技術や商品が発表されていないかなどを定期的に観察することがポイントとなる。ここで重要になるのが、いかに先入観を持たずありのままを見ることができるかだ。物事の全体と細部の両方の事象を純粋に見ることができれば、自分自身の世界観を広げ、アンテナや引き出しを増やし、新たな発見や発想を生み出すことにつながるのだ。
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OODAループは複数回繰り返すことが必要な思考法であり、迅速性が有利な点であることから、時間をかけて検討することに利点が少ないといえる。検討は必要であるが、データの収集と仮説を積み重ねていく方が得られる効果が多い。
OODAループは不確実性が高く柔軟な対応が必要な場合に即した思考法である。競合ひしめく市場に利益を生み出す製品を投入するためには、今まで以上に素早く的確に市場ニーズを捉え、価値へと変換していく必要があるだろう。そのためにもOODAループの思考法が手助けになるのだ。
また、OODAループの特性を活かすためにも、幅広い情報収集と緻密な情報共有を行うことがカギとなることは間違いない。正しく状況を捉え分析することが、市場ニーズを満たす製品や新たな価値の創出へとつなげるための土台となる。自業界のみならず他業界も含めた広い領域から必要な情報を取得し、構造的に市場を捉えるためには情報収集の効率化を見直していく必要もある。OODAループの効果を最大化するためにも、まずは情報収集という足元のDXを進めてみてはいかがだろうか。
参考記事
国土交通白書 2019
https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h30/hakusho/r01/html/n1121000.html
生産性&効率アップ必勝マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/content/000961264.pdf