mail
MENU CLOSE
  1. Stockmark
  2. coevo
  3. 研究開発
  4. 研究開発でOODAループを活用する!迅速かつ柔軟な思考法について解説

研究開発でOODAループを活用する!迅速かつ柔軟な思考法について解説

oodaloop-01

研究開発を進め、事業化を目指していくなかで、当初の仮説と異なる結果や道筋になることもあるだろう。そのような場合にも、素早く状況を判断し次の方向性を定めてスムーズに行動を起こすことは、資源や時間が限られるなかではとても重要なことである。

この記事では、研究開発の一助となるであろう「OODAループ」思考法について解説していく。OODAループとは、状況に合わせて柔軟に戦略を変えるための手法のひとつだ。この記事でOODAループの基本的な考え方や進め方をご覧いただき、試してみていただきたい。

 OODAループとは

OODA(ウーダ)ループとは、以下の英単語の頭文字を取った思考法のことをいう。

・Observe(観る・情報収集)
状況について観察し、情報収集を行う。先入観を持たず、観点を変えながらできるだけ多くの情報を得る。
・Orient(解る・方向性の判断)
得た情報と自身の持つ価値観を照らし合わせ、状況を理解し方向性を判断する。
・Decide(決める・具体的施策の決定)
具体的な施策について直感的に決定する。余裕のある場合は分析も加える。
・Act(動く・行動)
決定した施策について実行する。状況に合わせた柔軟な行動をする。

これら4つを繋げた一連の動作を繰り返すことをOODAループという。OODAループは、トップダウンによる指示を待たずに自ら迅速に判断して行動するための思考法として、アメリカ空軍の軍事戦略として考案された。OODAループの特徴として、ループのどの段階にあったとしても、外的変化があった場合は前の段階に戻ることができ、生じた状況に沿った方針転換をすることができる点が挙げられる。これが状況に柔軟に対応できる思考法と呼ばれる所以である。

OODAループは一方方向だけでなく、必要に応じて前の段階に戻ることもある

 OODAループが注目される背景

ではなぜ、OODAループが注目されているのであろうか。現代社会はVUCA時代ともいわれ、ビジネス状況は非常に不安定になっている。その時々の状況に応じて素早い判断を下し、意思決定するスキルがますます重要となっているのだ。

この状況は、ものづくり産業である製造業にも強い影響を与えており、研究開発に取り組む方々も身に染みて感じる場面が多いのではないだろうか。さまざまな市場で競合製品が多数存在し、顧客ニーズも複雑化するなか、事業貢献につながる研究開発を進めるためには、今まで以上に市場や社会状況を意識する必要がある。また研究開発では、製品リリースまでに数多くの段階があり、各段階で市場と対話を行わなければ売れる製品にはならない。また、製品化後も変わりゆく状況に合わせて改良を行っていく必要がある。

こういった要因が、変化する市場やニーズ、社会状況などの現況の観察を起点とした意思決定プロセスであるOODAループに注目が集まる背景である。

 OODAループとPDCAサイクルとの違い

PDCAサイクルとは工場などでの生産性を高めるために開発されたフレームワークである。Plan(計画する)、Do(実行する)、Check(評価する)、Action(改善する)を回すことにより、業務改善を達成することが目標である。PDCAサイクルは、達成すべき目標が明確になっており、事前に綿密な計画を立てることが前提のメソッドだ。状況そのものが不安定で、見通しが立てにくい場面では活用しづらいことが指摘される。

一方OODAループは、そもそも工程が定まっていない不確定な状況を前提として、情報収集による観察から仮説を立てる手法である。そのため、変動が起こりやすい状況下でPDCAサイクルよりも効果を発揮しやすい。また、PDCAは緻密な計画の後に実行することから、実行(Do)までにある一定以上の時間を要するが、OODAループは行動(Act)までのスピードが早く、急速に変化する状況へ対応しやすい。

 PDCAとの使い分けが理想的

OODAループとPDCAサイクルには、それぞれの特徴があり手法自体に優劣はない。特定の問題をクリアする場合や望む結果をいかに出すかといった業務改善を図るような場面であればPDCAサイクル。状況が不明確、または変動的であるような場合は、OODAループというように、それぞれの状況や目的に合わせて使い分けられることが理想である。

今の問題は何なのか、どのような解決を求めているのかを明確にすることで、それぞれの思考法の使い分けがしやすくなり、合わない思考法に苦慮することが減るだろう。

 OODAループを採用した際のメリット・デメリット

OODAループには以下のようなメリットとデメリットがある。

先述したように、OODAループのメリットには、状況観察(Observe)から行動(Act)までの進行スピードが早いことが挙げられる。また、はじめに現在の状況についての情報収集を行い分析をするため臨機応変な対応が行いやすい。そして、トップダウンではなく、現場での対応を前提とした思考法のため、個人の裁量が大きい点もメリットのひとつだといえる。現場の社員が主体的・能動的に動くことになるので、人材育成の観点からも利点がある。


一方で、業務改善などの決められたゴールに対する問題をクリアすることなどにはあまり向いていない。また、OODAループは個人で裁量を持ち意思決定するため、事前に個々の方向性について共有を行なっていないと組織統制が難しくなる点もデメリットとして挙げられる。この思考法を用いるときは、方向性の統一と情報共有を行うことが重要なのだ。

 OODAループの使い方

では実際にOODAループはどのように用いるべきだろうか。以下、それぞれの段階について詳細に解説する。

 Observe(観る・情報収集)

状況についての情報収集を行う段階であるが、特に意識して多くの情報を得ることが肝要である。技術や自業界に関する情報収集はもちろんであるが、社会の動向はどのように変化しているのか、市場や顧客の動向、ニーズの移り変わり、また今後参入してくるような新たなプレイヤーの情報など、他業界も含めて網羅的に取得する必要がある。また、現在や過去だけでなく他企業の今後の動向を追い、未来を意識して先行きを予測していくことも欠かせない。

 Orient(解る・方向性の判断)

次の段階は仮説構築のステージだ。ここで、自身の持つ経験や知識などと、前段階で得た情報をつなげ、分析を行い仮説を構築する。この仮説が最終的な行動を決めるため、特に重要なステージだといわれている。

ここで重要なポイントは、これまでの判断、行動の誤りに気づけるかどうかという点である。OODAループは一度ではなく何度も往復することでより有用性が高まる手法であるが、誤りを正すことができなければ複数回ループしても効果は限定的である。

 Decide(決める・具体的施策の決定)

次段階のAct(動く) に向けて、何をするのか決定する段階である。立てた仮説に沿って、複数の選択肢から最大限の効果を得られる最善の行動を選択する。ここでこれまで予期していない事態が発生したり、状況が変わるようなことがあれば、前段階のOrient(解る)に戻って判断をし直してもよい。

 Act(動く・行動)

決定した選択肢に従い、実際の行動に移す。行動後の状況に対し、また新たなループを開始することで、OODAループの1回転目を終えることになる。

 OODAループの活用例

ここでは研究開発における簡単な例を挙げる。

・Observe(観る)
顧客ニーズや競合の状況、社会環境の動向について情報収集する。

「カーボンニュートラルへの取り組みとして、日本政府がGXリーグを来年からスタートさせるらしい。自動車業界のEVの動向も活発になってきている。東京都は住宅への太陽光の設置が義務化に向けて本格的に動いているようだ」

・Orient(解る)
集めた情報と自身の持つ知識や技術から、研究開発の目的や方向性を決める。

「再生可能エネルギーの実用化が進んでいる。これから先、電柱や電線も再エネ利用を前提とした規格になるのでは。そこに自社の金属加工技術が活かせるかもしれない」

市場情報と技術をつなげて考えるためのおすすめのフレームワークはこちら

・Decide(決める)
実際の研究の方向性、すべきことを決定する。製作の前段階の試作を行い、検討する。

「再エネを送電する電柱・電線を実現することを目的として、金属加工技術の「薄い」という特徴を高めるための応用研究を進めよう」

研究テーマ決定のポイントについてはこちら

・Act(動く)
実際に実行した結果どうだったのかをまとめる。その状況を視点として、新たなOODAループに入る。

「形にはなりそうだが、今の状況を加味するとまだ足りていなさそうだ。この課題を解決するには何が必要だろうか。もう一度状況と課題を洗い出して情報収集を行ってみよう」

 OODAループを実行する際のポイント

組織でOODAループを活用する場合、自社の方針や部署の目的から外れることは避けたいことだ。ここでは、OODAループを用いる際に気をつけたいポイントについて紹介する。

・組織でゴールを共有する
・ループの1回転に時間をかけすぎない
・情報共有の徹底

 組織でゴールを共有する

OODAループは個人裁量が大きいことは既に挙げたとおりだ。このことから、組織内で各々が異なる研究に取り組んだ場合、ずれが生じることも考えられる。そのような状況を避けるためにも、最初の段階で組織としての目的を明確に設定する必要がある。また、研究が進むごとに、進捗を都度確認し合うことも重要であろう。

 ループの1回転に時間をかけすぎない

次に、ループの1回転に時間をかけすぎてはいけないことだ。これは、OODAループは複数回繰り返すことが必要な思考法であり、迅速性が有利な点であることから、時間をかけて検討することに利点が少ないからだ。検討は必要であるが、データの収集と仮説を積み重ねていく方が得られる効果が多い。

 情報共有の徹底

最後に、情報共有の徹底が必要不可欠であることを挙げる。ループの始点であるObserve(観る)は、情報収集が主目的であり、ここで集めた情報がその後のステップの土台となる。多角的な視点による意思決定を促すためにも、網羅的な情報収集と、得られた情報を組織内で共有することを徹底的に行うべきだといえる。

 まとめ

OODAループは不確実性が高く柔軟な対応が必要な場合に即した思考法である。競合ひしめく市場に利益を生み出せる製品を投入するためには、今まで以上に素早く的確に市場ニーズを捉え、価値へと変換していく必要があるだろう。そのためにもOODAループの思考法が手助けになるのだ。

また、OODAループの特性を活かすためにも、幅広い情報収集と緻密な情報共有を行うことがカギとなることは間違いない。正しく状況を捉え分析することが、市場ニーズを満たす製品や新たな価値の創出へとつなげるための土台となるのだ。自業界のみならず他業界も含めた広い領域から必要な情報を取得し、構造的に市場を捉えるためには情報収集の効率化を見直していく必要もある。OODAループの効果を最大化するためにも、まずは情報収集という足元のDXを進めてみてはいかがだろうか。

膨大な時間をかけなくても的確で有益な情報収集を行うにはどうしたらいいのか?
効率的な情報収集のヒントはこちら