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研究開発のテーマとは?テーマ創出のポイントや課題を解説

研究開発テーマ

研究開発をする上でテーマ選定は非常に重要なプロセスである。研究開発を取り巻く環境や社会環境の変化によって、研究開発テーマ選定のさらなる重要性の高まりを感じている方も多いのではないだろうか。

今回は、研究開発テーマに焦点をあて、その背景や課題、テーマ創出や選定におけるポイントについて解説する。最後までお読みいただき、一層事業貢献が求められる研究開発部門の研究者として、これから何を意識すべきか、何に取り組めばいいのかのヒントとしていただきたい。

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 研究開発のテーマとは

そもそも研究開発におけるテーマとは何だろうか。研究開発テーマとは、生み出したアイデアに市場への適合性、利益性、自社技術との親和性、また将来性を加味し、自社内で開発投資することが認められたものだ。研究テーマの設定は研究開発プロセスにおいて上流にあたり、創出されたアイデアを市場性など実際の状況・条件に即して洗練させたものだとも言える。また、研究開発テーマは次世代の利益成長を実現するための開発投資対象であることから、自社技術に関する長期的な方針や計画である技術戦略と深い関係にある。顧客や営業の要望をただ実現するだけのためのものでも、実用化につながらない研究でもないと言うことに注意が必要だ。

近年、経済のグローバル化の進展やニーズの多様化、多くの技術のコモディティ化など、社会状況は大きく変化した。研究開発プロセスは、かつてはキャッチアップ型が主流であったが、このような社会状況の変化に伴い、日本国内の企業でもMOT(技術経営)の重要性の認知が進んでおり、よりイノベーション型の研究開発の優先度が高くなっているのではないだろうか。

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 研究開発の現状

戦後の日本の経済発展は、先行する技術や製品を真似るだけでなく、品質を高めて量産することで強い競争力を得てきた。しかし近年は目覚ましい数々の技術の発展により、経済のグローバル化、多くの技術のコモディティ化が進み、かつてのスタイルのままでは国際競争力が低下するばかりとなった。

このキャッチアップ型からイノベーション型へと移行せざるを得なくなった時代背景には以下のような特徴がある。

 価格競争の激化

あらゆるものがあふれる現代では、さまざまな製品やサービスの価格競争が激化している。そのひとつの要因として製品のコモディティ化が大きく関係している。市場に同等価値の製品があふれ、製品同士の差別化が難しくなったため、価格で勝負せざるを得なくなった。この供給過多を起こす要因には、技術の発展と普及によって多くの企業が高水準の技術を持つようになったことや、インターネットにより他社製品の情報を容易に入手できるようになったことがあげられる。その中から抜きん出たものを作り出すには、キャッチアップ型ではなくイノベーション型の研究開発が必要であることは明白である。

 急速に変化し多様化するニーズ

これまでの社会的ニーズは不足を補うことや、より優れたものを所有することが中心であったが、モノ余りの時代と呼ばれる近年は従来のニーズが急速に変化し、また多様化している。そのため不十分な市場調査ではニーズの変化への対応の遅れにつながり、商機を逃すことになってしまう。

研究開発部門は、バリューチェーンにおいて顧客と接する現場から遠くに位置することが多い。また、技術研究や他の業務で手一杯となり、市場調査に十分な時間を取りにくいこともあり、顧客の声や市場ニーズを適切に捉えることが難しいと感じる方も多いのではないだろうか。しかし、より一層の事業貢献が求められる研究開発部門においても、時代のニーズを的確に読み取り、自社技術と結び付けていく必要性があり、市場調査の重要性は高まっている。

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 製品ライフサイクルの短命化

キャッチアップ型であれば最先端技術を追いかける形となり、その分野の先駆者にはなれない。情報の巡るスピードが上がり、製品のライフサイクルは短命化し、トレンドも目まぐるしく変化していくのが昨今の市場動向だ。その中で後追いする従来のスタイルのままであれば時勢を逃し、タイムリーに商品を投入することは難しい。またこの情報社会において新しいニーズを満たす製品やサービスはインターネットを利用して消費者に提供される機会が増え、その提供速度はここ数年でますます上がっている。いち早くニーズの変化を捉えることができなければ遅れを取るばかりである。自ら価値を新しく創造していくという立場に立脚した上でのテーマの選定・検討が求められている。

 研究開発テーマが創出できない理由と課題

経済産業省の調査データによると、日本の研究開発費は年々増加傾向にあるが、産業部門の研究開発投資効率は減少している。つまり、研究開発への投資が大きな利益を生むイノベーションにつながっていないことが伺える。

参照:経済産業省「我が国の産業技術に関する研究開発活動の動向-主要指標と調査データ-」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/gijutsu_kakushin/tech_research/shiryou.pdf

なぜイノベーティブな研究テーマの創出は難しいのだろうか。

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 理由:事業化推進スキルの不足

事業貢献につながる研究テーマの創出ができない理由のひとつとして、事業化を推進するスキルの不足があげられる。研究開発を起点とした新価値創造や新規事業創出のためには、事業化を推進する技術経営的な視点が必要だ。なぜならば、企業のビジョンに沿ったものでなければそもそも企画は通らず、また事業として成功するには顧客の抱える「課題」を「解決」するものでなければならないからである。つまり自社ビジョンへの深い理解と、世の中に存在している課題と解決策を見つけるスキルを強化する必要があるのだ。よりよいテーマ創出においては研究開発の成果を実践性ある経済的価値に結びつけるための視点を、今まで以上に養っていくことが求められていると言える。

 課題①:用途や製品化を見据えた視点がない

用途や製品化を見据えた視点がないということはテーマに対するマクロな視点を持ち得ていないということである。アイデアからテーマへと昇華させる段階で適切な情報の取捨選択ができていないと本質的な課題発見がなされず、テーマ自体が曖昧で弱いものになる可能性が高い。

事業化スキルに関わる課題として、ひとつの物事に対してさまざまな角度、視点から観測し情報収集することも重要である。エンドユーザーの視点、消費者動向、競合他社の商品、似た技術を使った製品など、ひとつの商品・製品に対して分野の違う情報が数多く存在している。マクロ・ミクロな視点を切り替える意識を持ち、具体的な情報に接することが重要である。

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 課題②:市場を捉えられていない

よりよい研究開発テーマを創出するにあたり、最終的に商品を投入する市場や同じ研究領域についての知識を得て、理解することが必要不可欠である。アイデアに具体的な肉付けを行い、イノベーションを生み出すためには、その分野に精通した上で検討を重ねていく必要があるからだ。市場に対する知識の獲得及び理解を深めるためには常日頃からアンテナを張り、知識・理解のアップデートを繰り返さなくてはならない。

一方で、急速に変化する市場を的確に捉えることは簡単なことではない。国際経営開発研究所が公表しているデジタル競争力ランキングの中で、デジタル競争力に影響を与える構成要素のひとつである「ビジネスの俊敏性」の順位が出されている。「ビジネスの俊敏性」の測定指標のうち、「機会と脅威」、「企業の俊敏性」、「ビッグデータの分析と活用」は、2020年においていずれも最下位(63位)となっている。このデータを見る限り、国際的な水準と比べ日本企業は市場を捉えてビジネスへ生かすことができていないのが現状ではないだろうか。

参照:総務省「令和3年版情報通信白書」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/index.html

デジタル技術は今後も進展し、製品のライフサイクルの短期化の傾向も強くなると予想される中、領域を超えてやってくるディスラプターの出現の脅威も無視できない状況である。厳しい状況下で生き残るためには、新規市場開拓を目標とする場合だけでなく、既存市場および領域を超えたさまざまな情報収集を定常的に行うことが重要である。また、新しいアイデアや将来性・事業性のあるテーマを見出すためには、従来のような部門ごとに孤立した情報収集だけでなく、部門間のコミュニケーションや共創に、より一層取り組んでいく必要性が高まっていくだろう。

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 研究開発テーマはバックキャスト型で選定する

テーマを選定する際にはさまざまなアプローチ方法があるが、今回はバックキャスティングでのアプローチ方法についてご紹介する。

 バックキャスティング(Backcasting)

理想的な未来の姿から想像、逆算して、現在取り組まなければならない課題や今後の道筋について考える思考方法である。バックキャスト思考は、現行のやり方を根本的に見直すことにつながるため、達成難易度が高く実現可能性が不確かな場合に適している。

たとえば、SDGs(Sustainable Development Goals)施策は2030年までに達成すべきゴールが17つあり、それらは簡単に到達し得ない目標である。そのためバックキャスティングによって、目標の達成期限から逆算し、達成のために今何をすべきかを検討する。

新しい製品化や事業化を目指す研究開発のテーマ選定においても同様で、将来の顧客や社会を予測し、そこから逆算してテーマ選定を行うのだ。一方、この手法の重要な判断材料が顧客や事業などの将来予測であることや、自社の強みや競合の動向も情報源となるため、考察するための情報収集は欠かすことができない。

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 研究開発テーマの評価と創出のポイント

テーマ選定にあたってどのようにテーマを評価すべきか、そのポイントについて述べる。以下の点に注目して客観的かつ総合的に評価判断することが重要である。

 自社のビジョンに沿った研究テーマである

研究開発テーマ選定は研究開発における上流プロセスであるから、自社の研究開発における技術戦略そのものと言える。技術戦略が自社のビジョンと相違していてはシナジーを生み出すことは困難だからだ。相乗的に利益を生むためには、自社の成長戦略のビジョンに則った研究開発テーマであることが望ましい。

テーマ創出において長期的視点は必須であり、そのためには経営ビジョンの理解が求められる。ただし抽象的なビジョンやビジネスモデルに沿うかどうかに終始してしまうと具体的実践につながらず、テーマ自体も曖昧になる恐れがある。実際的な深い知見からテーマは創出され、マネジメントなど他者との具体的な討論・討議を通して、自社ビジョンの特徴に沿うようにテーマの修正、検討を行うことが実践性の高いテーマ創出につながる。

 自社の技術アセットが生かせる

イノベーション型の研究開発テーマ創出には独自性が必要不可欠である。知識の集積やコスト面だけでなく、事業の差別化においても自社独自の技術アセットを生かし、独自性を確立することが有効なのだ。

また自社の技術アセットを生かすためには、自社技術のどのような部分が、あるいは具体的に何が競争優位性の源泉となるかをはっきりと理解しておく必要がある。そのためには技術の棚卸しをすることが重要である。ただ単に自社技術を一覧化するのではなく、棚卸しを行い自社のコアとなる技術の見極めと、強化すべきポイントを見つけることが大切だ。自前主義の傾向が強い日本ではあるが、近年は自社に不足する技術を、他の企業や大学などと共同の研究開発で補完するオープンイノベーションの動きも増加しつつある。

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 他社との差異化要素を出せる

競争上の優位性を確立するためには、差別化ではなく差異化ができているかもポイントとなる。差別化とは、競合比較表で優劣を比べ、優れている軸をアピールする戦略のことだ。一方、差異化とは他とは違う層をターゲットとしたり、異なるコンセプトで販売するなど独自の市場を作り出す戦略である。競合比較表で他社が持っていない軸を作ることになるため、優劣を比較することはできない。つまり、差別化で見出した強みは、模倣された時点で強みではなくなってしまうが、差異化できれば差別化の競争から外れ、独自の強みを武器に市場で戦うことができる。同質化戦略に持ち込ませないような独自の価値を創出し差異化できるかどうかは、テーマ選定において重要な評価ポイントである。

また戦略なくして用途開発や研究開発テーマの設定を行ったとしても、失敗することは容易に想像できる。用途開発における他社の成功事例及び失敗事例について情報収集、解析をして、確実性の高い戦略を立てることが必要になる。

 自社の専門分野に近いスタートアップ調査も重要

領域の近いスタートアップを調査することも肝要である。また、スタートアップ企業や異業種・異分野と協業するオープンイノベーションの事例は増えつつあり、今後協業する可能性があるかという視点で見ることも重要なポイントである。分野の近いスタートアップの調査は市場調査にも役立ち、情報感度の高い層の関心について学ぶこともできる。協業によるデータや知見の連携はシナジーを生み、バックグランドの異なる研究者同士の情報交換は、テーマの研究開発を進める上で効率的な知識の集積にもつながることが期待できる。

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 まとめ

企業の存続と成長をかけ、研究開発を起点とした新しい製品や事業を継続的に創出していくためには、イノベーティブな研究開発テーマに取り組み続ける必要がある。企業の今後を担うテーマを出し続けるためには、研究者や技術者に担当分野の専門的な知識だけでなく、市場性や事業性の把握、自社ビジョンの理解、さらには部門内外や社外とのコミュニケーション能力など、これまで以上のスキルが求められつつある。

イノベーティブな研究開発テーマを創出するためには、分野を広く見据えるマクロな視点を持つこと、また専門分野の知識についてミクロな視点を持つことの両方が必要なのだ。これらの視点を得るためには、さまざまな知見を広げる情報収集が肝要である。常に知識をアップデートし、さまざまな視点や切り口での情報収集が今後必要不可欠となりつつある。