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製造業の研究開発に必須!研究開発DXを進めるポイントとは?

実験の画像

国やさまざまな業界の企業など社会全体でDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む動きが活発になる中、製造業においても変革を試みる企業が増えている。DXのF最終的な目標は、業務プロセスやビジネスモデルを変革し、新たな価値や事業の創出を実現することで、競争上の優位性を確立することを目指すことだ。業務プロセス全体の変革に及ぶDXの波が、いよいよバリューチェーンの上流にある研究開発に影響を与え始めている。

この記事では、研究開発におけるDXについて国の政策を含め、今後の課題と推進のためのポイントなどを解説する。

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 実験至上型からデータを使いこなす時代へ

急速に変わりゆく社会状況や多様化するニーズに伴い、製品ライフサイクルは短命化し、それらに応える製品を作るためには、従来の「仮説・実証型」の手法のみでは追いつけないスピードとなっている。膨大な量の研究成果のデータを集め、かつ迅速にデータの解析を行うデータ主導型の手法に時代の潮流があるのだ。新しい価値や事業の中心とも言える新たな技術や素材を生み出す役割を担う研究開発部門において、DXの推進は必要不可欠なのだ。

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 可能性を取りこぼさないために

近年、研究開発部門における負担が大きくなってきている。事業環境の変化への適応や、顧客や市場ニーズに合わせた新しい価値を短い期間で生み出すことにミッションが変わりつつあるためだ。研究開発の高速化や効率化が求められる中、新規で申請される化学物質の件数は、直近では年間500〜600件前後となっており、それらを製品として活用するためには調査や作業時間が膨大に必要となる。研究や法規制に関する非常に多くの情報を調べ集める必要があるだけでなく、それぞれの物質の量産化技術の確立や応用研究などさまざまな開発研究も行う必要があるためだ。当然、毎年見つかる新物質全てを細かに研究できるかと言えば不可能である。もちろん全ての化学物質が製品に活用できるとは限らないが、研究しきれなかった化学物質の中に革新的な物質があるかもしれない。そういった可能性を秘めた化学物質を埋もれさせないためにも、研究開発の効率化と高速化を進めることが急務なのだ。

 国主導の研究開発DXを推進するための3本柱とは?

文部科学省は2020年に「文部科学省におけるデジタル化推進プラン」を発表し、デジタル化推進プランの1つとして、「デジタル社会の早期実現に向けた研究開発」を挙げ、研究開発のDXを推進しようとしている。その取り組みの「3本柱」として以下をあげている。

・デジタル社会への最先端技術・研究基盤の活用
・将来のデジタル社会に向けた基幹技術の研究開発
・研究環境のデジタル化の推進

それぞれの項目について解説する。

 デジタル社会への最先端技術・研究基盤の活用

3本柱の1つ目は、研究データの活用や、インフラの整備により日本全体での連携を促し、デジタル社会に向けた研究基盤を築くことである。さまざまな分野の膨大な研究データを整理・収集・共有することで、世界的な潮流でもあるデータ駆動型の研究開発を推進するとしている。また、世界に誇る計算基盤のスーパーコンピューター「富岳」などを活用し、デジタル社会におけるイノベーション創出に不可欠な次世代情報インフラの整備と強化を図る。他にも、研究施設や設備のリモート化・スマート化の推進により、研究の生産性や利便性の向上を目指すことや、官民連携により最先端技術の早期社会実装を目指すことなどがあげられている。

つまりデータやインフラを整備することで、研究機関同士で情報共有や連携が行えるようになり、日本全体で研究開発の効率化を目指そうとしているのだ。

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 将来のデジタル社会に向けた基幹技術の研究開発

3本柱の2つ目は重要な基幹技術の研究開発だ。これは将来の産業競争力の基幹技術となり得る計算科学技術やAI、量子技術などに集中的な投資を行い、「デジタル強国」に向けた基盤構築を目指す。それぞれの技術の高度化や成果創出の加速化を行い、社会への実装と新基幹技術として確立させるための中長期的な施策である。

 研究環境のデジタル化の推進

3本柱の最後はオープンサイエンス時代を先導する「研究DX」の実現である。研究環境すべてのデジタル化を進めることとし、獲得したノウハウや成功事例の展開も含め、国際競争を勝ち抜くための改革を行うとしている。具体的には、研究活動の機械化・遠隔化・自動化の推進や、研究情報のデータベース化、ファンディングや共用研究施設に関わる手続きのDXなどがあげられている。

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 研究開発DX推進のキーワード「マテリアルズ・インフォマティクス」とは?

マテリアルズ・インフォマティクス(MI)とは、材料開発のプロセスを変革する画期的な方法論として近年注目されている。化学産業のようなプロセス系製造業での製品設計に対してデジタル技術を活用する。材料開発を効率化するために、実験や論文などの膨大なデータを解析して製造方法の予測を行うことができる。

材料開発は、数年から長くて十数年近くかかることもあり、手間と時間が必要なプロセスである。加えて、材料探索には研究者の知識や経験により、化合物の選定や設計、多数の合成と特性評価が行われてきた。その最も時間と手間のかかるプロセスを、コンピューターで高精度に計算されたデータベースやAIを活用することで、時間とコストを削減し効率化と高速化の実現が可能となる。研究者の経験や勘を膨大なデータが支えることで、人力だけでは気の遠くなるような時間を大幅に短縮できることや、見つけることが難しい未知の掛け合わせや新たな化合物の発見につながるなど、大きな進歩が期待されている。

 研究開発におけるDXの課題

国が発表している通り研究開発のDXは、今後の日本の行く末を決める重要な取り組みである。一方、DX推進にはさまざまな課題が立ちはだかっている。

 認識が統一されず、どこか他人事である

1つ目にデジタル技術の使用者同士で認識が合っていないことがあげられる。データの有用性や活用範囲の認識がサプライチェーン内の取引先で異なっていたり、社内の各部署や技術者間でも認識が統一されていないことによるものだ。また、DXの推進がデジタル技術に精通している情報システムの担当者のみになおり現場担当者がほとんど関わってい場合や、関わっていたとしても多忙を極める中心的な現場担当者以外のメンバーや若手のみで構成される場合などもあり、的から外れた内容の検討になってしまっていることもある。

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 ただの作業効率化にとどまっている

次に、運用のデジタル化に注力しすぎているという問題だ。これは研究開発において課題の抽出や解決策を出すことや、アイデアの創出などのクリエイティブなことよりも、完成図面の管理や実験の自動化などの運用面のデジタル化や効率化に囚われてしまっているということだ。製品ライフサイクルが短命化し、変わりゆく市場に合わせた研究開発を行っていくためには、運用の効率化だけで考えるのではなく、その先の新たな価値を創出することを含めたプロセスの改革を行う必要がある。

 研究開発DXを進めるためのポイントとは?

組織一丸となって研究開発のDXに取り組むために押さえておきたいポイントを紹介する。

 目的を明確にする

研究開発のDXには業務プロセスの変革が伴うため、成果を出し続けるようになるためには、ツールの導入だけではなく、プロセスを見直し、使用者の意識と行動の変革が必要だ。そのため、1日で達成できることではなく中長期の取り組みと捉え、開発とはどうあるべきかに向き合い試行錯誤を続けていく必要がある。その改革のためには、「何のために」「どのように」行うのかをあらかじめ明確にしておくことが重要である。目的と戦略を置くことで、今やるべきことや投資すべきことの判断がしやすくなるためだ。また全体像をはっきりさせることで、関係者の認識を合わせることができる。

 つながりを生む組織体制の構築

社会問題を解決できるような新しい価値を生み出すためには、複数分野をまたぐデータや知見の連携が必要不可欠である。そのためにはデータ連携を行うだけではなく、その分野に精通する研究者同士の人と人のつながりも重要となる。部門を越えたデータの連携、研究者同士のつながりが生まれやすい組織体制を築くことが求められる。

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 研究開発DXのために個々で行えること

研究開発DXが最終的に目指すべきは、研究開発を起点としたイノベーションを生み出すサイクルの高速化を行い、市場ニーズに応える製品開発を行うことである。そのためには、研究開発だけでなく、新製品や新規事業開発のアイデア創出から市場投入までの一連の工程で情報共有が行えるインフラを作る必要がある。

このプロセスをつないだ体制は一朝一夕で実現できるものではないが、連携することができれば研究開発はより市場に近づくことができる。研究開発から新しい価値の創出を可能とするために、今から事業化や製品化を視野に入れたビジネス視点を養っておくことが重要である。自業界や研究分野のみならず、他業界や他企業、スタートアップや海外の動向など広い視野による情報収集が豊かな知識の引き出しとなるのだ。

 まとめ

研究開発DXは国も推し進める重要な施策である。今後競争力を高めていくためには、プロセスを効率化し、市場ニーズとつなげた製品開発のサイクルを高速化することが必要不可欠である。そのためには、政府が掲げる通り研究情報のデータベース化を進め、さまざまな分野で活用できる環境づくりが急務である。研究者個人として、まずはさまざまな情報に目を向け、ビジネス視点を養うことから始めてみてはいかがだろうか。

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