日本や世界の半導体メーカー・会社・企業【分野別で紹介】
製造業
ここ数年は、新型コロナウイルスの感染拡大によって半導体不足に陥ったが、現在は、元の様相を取り戻し、生成AI(人工知能)などの分野を起点に需要が高まっている。
2024年は、年初から半導体のビッグニュースがいくつか飛び込んできた。まず新興企業であるNVIDIA(エヌビディア)が2023年度通期決算で売上高世界首位に。また、日本では2024年2月に熊本県菊陽町で「TSMC」の工場が開所し話題となった。半導体関連銘柄の株価も上昇傾向で、トレンド市場のひとつといえるだろう。
本記事では、改めて半導体の概要や仕組み、製造プロセスなどについて解説したい。
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目次
半導体とは、金属など電気を通しやすい「導体」と、電気をほとんど通さないガラスなどの「絶縁体」の中間の性質をもつ材料を指す。英語ではセミコンダクターと呼ぶ。素材例としては、シリコン、ゲルマニウム、セレンなどが挙げられる。
半導体は電気を通したり通さなかったりすることで、電流を制御することが可能だ。こうした性質を利用することで、集積回路(IC)やメモリなどの製品に使われている。なお、慣用的にはトランジスタや集積回路(IC)のことを半導体とするが、半導体はあくまで素子であり、トランジスタや集積回路(IC)は部品をいう。
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導体や絶縁体との違いは導電率(抵抗率)だ。まず導体とは電気を通しやすい物質のこと。アルミニウム、銅などが挙げられる。導電率(抵抗率)は10-8~10-4 Ωcm。
半導体は、導体ほど電気を通さないものの、導電率(抵抗率)は10-4~108 Ωcmほどだ。一方、シリコンやゴム、ガラスなどに代表される絶縁体は全く電気を通さないわけではない。極端に抵抗が強い素材であり、導電率(抵抗率)は108~1018 Ωcmとなる。
半導体はゲルマニウム、セレンなどが使われることもあるが、もっともポピュラーな材料がシリコンだ。なお、シリコンは電気絶縁性に優れており、そのまま活用しても電気は通らない。そこで、不純物を微量に加えることで電子が動けるようにする。電子を余分に持つリン(P)などの不純物を加えた「n型半導体」と、電子の少ないホウ素(B)などの不純物を加えた「p型半導体」など、添加する不純物によって型が変わる。現在はこの2つの型をつなぎ合わせることで、電流を流す「pn接合」が主流だ。
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では、半導体は具体的にどのような役割をもつのか。大きく以下の3つが挙げられる。
オンオフの切り替え・信号の増幅(トランジスタ)や一定方向に電流を流す(ダイオード)といった制御が実現できる。
また、半導体は電気エネルギーを直接光に変換させることも可能。レーザーダイオードやLEDなどが例として挙げられる。
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半導体は電気エネルギーを直接光に変換させるだけでなく、その逆も可能だ。これはソーラーパネルにも使用されている太陽電池の原理そのものである。
半導体の微細化が進んだことで、半導体の製造工程・プロセスは複雑化しつつある。ここでは、代表的なプロセスを「前工程」「後工程」の2つにわけて解説していく。
前工程には大きく「成膜」、「リソグラフィ」、「不純物拡散と平坦化」の3つのプロセスがある。
成膜とは、半導体の材料であるウェーハ上の回路に非常に薄いシリコンやアルミニウムなどの膜を形成する工程だ。形成方法はいくつか種類があり、放電によってイオン化した材料をウェーハ表面に衝突させる「スパッタリング」、ガスにさらして膜を付ける「CVD法」などがある。
光や電子ビームなどで電子回路のパターンをウェーハに写す工程。フォトレジストという感光材をウェーハ表面に塗る「レジスト(感光剤)塗布」、フォトマスクを通して光を照射し、回路パターンを焼き付ける「露光(転写)」、不要なフォトレジスト部分を除去する「現像・リンス」、不要な酸化膜と薄膜を除去する「エッチング」、残っているフォトレジストを剥離する「レジスト除去」のプロセスにわかれる。
先に述べたn型半導体またはp型半導体の領域を作る工程のこと。方法としては「熱拡散法」と「イオン注入法」の2つがある。その後、ウェーハ表面を研磨して凹凸をなくす。
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後工程には大きく「ダイシング」「ワイヤーボンディング」「モールディング」「最終検査」の4つのプロセスがある。
半導体の製造において、ウェーハ上に形成された集積回路(IC)を一つひとつのチップとして、高速回転させたダイシングブレードで切断する工程。ダイシングブレードで切断する方法が主流だが、レーザーで照射し切断する「レーザーアブレーションダイシング」や「ステルスダイシング」と呼ばれる手法もある。
トランジスタや集積回路(IC)の電極と、リードフレームや多層基板の電気接続端子の間を電気伝導性を有する金属細線で電気的に接続するプロセスだ。
ワイヤーボンディングが完了したICチップを溶融した樹脂などで封止する方法。ICチップは非常に衝撃に弱い構造をしており、保護が必要だ。また、傷や衝撃だけでなく、ほこりや磁気などからも守る役割がある。高性能のICチップでは、樹脂ではなくセラミックを使用することがある。
できあがった半導体が一定以上の温度や電圧に耐えられるかをテストする工程。実際の使用環境よりも厳しい条件でテストをすることで、半導体の品質を引き上げる目的もある。この段階では、温度や電圧試験のほか、電気的特性試験、外観構造検査や、長期寿命試験などいくつもの検査が実施される。
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半導体は、我々が普段目にする電子機器や家電、自動車、産業機械など、さまざまなシーンに広く用いられている。まさに生活や産業になくてはならない存在といえる。
深層学習や機械学習を行うには、高効率で複雑な計算処理が求められる。そのため、CPUだけではどうしても処理に限界が生じてしまう。現在は、CPUとともにGPUやFPGA(Field Programmable Gate Array)などを併用することが一般的だ。
各種センサー、バッテリー、車載カメラ、各種制御装置(ブレーキ・エンジン・車間距離制御)など、さまざまな部分に利用されている。また、自動運転技術の実現にはAI(人工知能)技術の活用が始まっており、FPGAやASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの導入・開発が進んでいる。
パソコンを動かすために不可欠な部品「CPU」がまさに半導体である。なお、高速で大容量のデータを処理するパソコンやスマートフォンには「VLSI」と呼ばれる1億個超のトランジスタを集積したICが搭載されている。
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電子機器や家電、自動車、産業機械など、あらゆるものが高度化・複雑化されるにつれ、半導体の技術も進化している。それは、微細化、大量のデータを高速処理する能力、消費電力を削減して寿命を伸ばす技術など多岐にわたる。また、半導体製造のプロセスもこれらの技術進化に伴い、複雑化・高度化している。
各国は自国での生産能力を強化するために積極的な投資を行っており、政府主導での支援策を打ち出している。半導体の技術進歩はまだ天井が見えず、量子コンピューティングや人工知能(AI)の発展に伴い、次世代半導体の開発が急務となっている。
急速に変化する半導体市場の動向を把握するためにも、業界関係者は引き続き注視する必要がある。市場の需要と供給のバランス、技術革新の進展、そして各国の政策動向など、多岐にわたる要素が市場に影響を与えるため、これらの情報を適時に収集し、分析することが重要である。