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次世代半導体とは?日本が世界トップに返り咲くカギとなるか

次世代半導体とは?日本が世界トップに返り咲くカギとなるか

かつて技術大国として名を馳せた日本も、現代ではすっかり他国の陰に隠れている。「Japan as No.1」と呼ばれていた1990年代に比べ、2010年代以降は、世界知的所有権機関による世界で最も革新的な経済を格付けする グローバル・イノベーション・インデックス (GII)で日本がトップ10に名を連ねたことはない。ここ20年ほど思い通りに成果が出せていない状態であるが、技術大国としての地位を取り戻すべく注力するひとつとしているのが「次世代半導体」の開発だ。

本記事では、注目を浴びる次世代半導体について、日本で進められている取り組みや今後の研究課題などを解説する。

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 次世代半導体とは

半導体とは、電気抵抗が導体(金属など)と絶縁体(ゴムなど)のおおよそ中間に位置する物質だ。電気抵抗が中くらいであることの強みは、不純物の添加などによって電子の流れを制御しやすい点にある。

この性質を利用して生まれた半導体素子「トランジスタ」を、微細な回路の中に可能な限り多く搭載することで、電子機器の性能は飛躍的に向上した。パソコンや生活家電、あるいはスマートフォンなど、半導体技術によって生まれた製品の例は挙げればキリがない。

さらに近年においては、2nm(ナノメートル)の超高密度な半導体の研究開発が国内外で行われている。なお、2nmというのはウイルスより小さく、DNAの直径とほぼ同じサイズである。

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 次世代半導体の特徴

半導体は従来、シリコン素材を主体として製造されてきた。シリコン素材は電流制御のしやすさが魅力である反面、発熱のしやすさから大電流を流しにくく、それを必要とする高性能な電子機器には不向きという課題があった。

このような背景から、次世代半導体の開発においては、GaN(窒化ガリウム)やSiC(炭化ケイ素)などの化合物半導体が注目されている。

その特徴は以下の通りだ。

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 電子の移動速度が早い

化合物を用いた次世代半導体は、シリコンなどの元素半導体に比べて、電子の移動速度が格段に早い。この特性は、コンピューターの各種処理装置のほか、携帯電話をはじめとしたあらゆる通信機器への活用が見込まれている。

また、単純な受発光装置として見ても、化合物はシリコンに比べて光電変換効率が非常に高い。この特性は、カメラや計器類など、素早い発光を必要とするあらゆる装置への応用が期待できるだろう。

 バンドギャップが大きい

バンドギャップとは、固体物理学における概念で、絶縁体や半導体の電子のエネルギー状態を表す。原子核の周りには、複数の層からなる原子軌道が存在する。原子軌道の各層には電子が埋まって安定化した「価電子帯」と、外側で電子が比較的自由に動く「伝導帯」に分かれる。この価電子帯と伝導帯の間にある空白が、バンドギャップと呼ばれる領域だ。バンドギャップは電子が存在できない領域であり、価電子帯から伝導帯まで電子を移動するには、電圧や熱といった外力を加えなければならない。

つまり、バンドギャップが大きければ大きいほど、一度に高い電圧をかけられるというわけだ。化合物半導体はこのバンドギャップが大きいため、高電圧・大電流への耐性に優れ、発熱性もシリコンほど高くない。この特性は、精密機器や高周波通信などさまざまな用途への活用が見込まれる。

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 次世代半導体に期待される用途

次世代半導体に期待される用途は、家電から通信機器まで多岐にわたる。産業レベルでは、データセンターにおけるサーバーの小型化、工場における産業機器の高精度化などが主な活用方法だ。家庭レベルにおいても、白物家電のモーター駆動効率アップ、テレビやEV(電気自動車)の軽量化など、期待されている活用シーンは多い。また、再生可能エネルギーやHEMS(分散電源)といった電力システムにも、大電流を流せるという化合物型のメリットを存分に活かせるだろう。

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 日本における次世代半導体の戦略

次世代半導体の主流は、2011年にインテル社が導入したFin-FET型から、より電流の漏れを抑えたGAA型に切り替わりつつある。Fin-FET型の時代に量産化を実現できなかった日本にとって、GAA型への移行タイミングは、半導体分野の開発競争で欧米諸国に勝つためのチャンスといっていい。以下に日本でどのような取り組みが行われているのか、2つの事例をご紹介する。

 量産製造拠点「Rapidus株式会社」

Rapidus株式会社は、半導体部品の設計開発から製造販売までを包括的に担うと共に、次世代半導体のサイクルタイムを世界一短縮することを経営方針に掲げている。ソニーグループやトヨタ自動車など、8つの企業から計73億円の出資を受けて2022年に設立された半導体メーカーで、2021年には政府が700億円の補助を行うことを決めている。

さらに2023年4月には、北海道千歳市に最先端半導体工場「IIM-1」の建設に対して、新たに2600億円の補助を発表した。西村経済産業大臣は、「Rapidusは、日米欧が半導体分野で協力する象徴的なプロジェクトであり、総力を挙げて支援したい」と述べている。

 研究開発拠点「技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC:Leading-edge Semiconductor Technology Center)」

Rapidus株式会社の取締役会長を務める東哲郎氏は、次世代半導体に関する技術研究組合「LSTC」の理事長も兼任している。LSTCは、次世代半導体の設計・製造に向けた要素技術や国内供給体制の確立を目的に、2022年に設立された研究開発プラットフォームだ。

RapidusとLSTCは下図のように、研究開発と実用化を分担する形で連携している。LSTCはその他、4つの研究機関および9つの国立大学とも連携しており、迅速な量産化実現に向けた開発体制の構築を目指す。

経済産業省「次世代半導体プロジェクトのアップデート」より
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/post5g/230425.pdf

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 集積化を予測した「ムーアの法則」とは

ムーアの法則とは、集積回路あたりの部品数増加に関する将来予測である。1965年、世界的な電子機器メーカーであるインテル社の創業メンバーであるゴードン・ムーア氏が提唱した。「集積回路あたりの部品数が2年ごとに2倍になる」というもので、長きにわたり半導体産業の指針となってきた。

ただ、近年はこの予測に対して限界が指摘されている。半導体のサイズを際限なく縮小していくと、やがては原子の大きさという物理的限界がくる。また、ムーアの法則では回路の微細化によって製造コストが下がるとされていたが、現実には微細化の困難性から開発コストが増している。

2016年に米エネルギー省のLBNLが1nmトランジスタの開発に成功するなど、半導体の進化が続いているが、極小化の流れはいずれ頭打ちになるだろう。

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 次世代半導体の研究課題

次世代半導体を実用化するためには、微細化という根本的な課題の他にも、集積化の難しさや新素材の開発など多岐にわたる。

 微細化

Rapidusでは2nm半導体について、2025年に試作ラインを稼働させ、2027年を目途に量産化を目指している。一方海外に目を向けると、TSMC(台湾)とサムスン電子(韓国)は2025年に2nm半導体の量産開始を予定しており、日本より2年も早い。さらに、サムスン電子は2027年を目途に、次世代半導体を1.4nmまで微細化する計画だ。日本が今から、他国との数年分の差を埋めるには、より柔軟な発想で効率的に微細化を図る必要がある。

その一策として2022年、従来の回路を複数のチップレットに分割し、マイクロピラーと呼ばれる柱状金属で連結する集積技術「PSB」が開発された。東京工業大学と共同研究企業が開発したこの技術は、従来の集積回路に比べ、連結密度や電力効率を大幅に改善することが期待されている。

 3次元(3D)集積化

次世代半導体をより効率的に微細化するには、平面の密度を上げるだけではなく、縦軸の活用も模索しなければならない。各国の電子機器メーカーでは、チップレットを横ではなく縦に連結する「3 次元集積化」技術の研究開発が盛んに行われている。実際、TSMCは日本に3D IC研究センターを開設し、インテルに至っては3D集積の課題であった寄生容量(※)を、TDV(絶縁膜貫通ビア)によってある程度解決している。

一方の日本では、2023年7月には東工大の研究チームが、WOWアライアンスとの共同研究により、CPU / GPUとメモリを3次元積層する技術「BBCube 3D」を開発した。BBCube 3DはAI向けの広帯域メモリと比較して、データ転送速度が4倍、電力消費が5分の1という非常に高いパフォーマンスを発揮する優れものだ。

(※)導線間に設計上意図しない形で生じる微小な電気的容量。この寄生容量は、回路の動作速度や性能に影響を及ぼすことがある。

 新素材の研究開発

次世代半導体では、シリコン以外にも新たな素材の研究と開発が必要だ。理論的にシリコンの電力効率の向上には限界があり、現時点での技術では改善が難しくなっているだけでなく、環境問題への関心の高まりから、シリコン素材の製造で二酸化炭素、メタン、フロンなどが生成されることに懸念が生まれていることも関係する。

次世代半導体として期待される化合物半導体は、電子の移動速度が速く、信号処理をはじめとした回路の性能を向上させるメリットがある一方で、高集積化や品質を安定させることの難しさや製造コストの高さなどの課題がある。化合物半導体の研究開発が進み、製造コストが下がれば、間違いなく主軸となる素材として量産されることになるだろう。

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 まとめ

半導体は新たな節目を迎えており、次世代の半導体を生み出すべく多くの国と企業が競い合っている。このターニングポイントで、いかに政府や他企業とグローバル規模で連携し、新たな技術開発のための研究・開発の強化によって技術革新を起こすことができるかが、競争力の維持と向上につながるだろう。

まずは目まぐるしく変わってゆく半導体業界の動向に目を光らせ、グローバル企業を含めた世界の全体像を捉えていくことが大切である。