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太陽光発電の動力源として用いられている太陽電池。一般的にはソーラーパネルとして目にすることが多いが、近年は塗布技術や印刷技術で作製が可能なペロブスカイト太陽電池など、薄型化・小型化における技術革新が進んでいる。本記事では、太陽電池の種類や仕組み、メリットなどについて解説していく。
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目次
太陽電池とは、太陽光などの光を電気に変える装置のことだ。光電池ともいう。太陽光発電に使われる装置で、一般的にはソーラーパネルとして呼ばれることが多い。他の電池と異なる点は蓄電しないことだ。吸収した太陽光をそのまま電気に変換使用するか、余った電力は電力網を経由して売電される。
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改めて、太陽電池の仕組み・原理について解説する。太陽電池の主材料は「半導体」という特殊な素材でできている。半導体は、導体と絶縁体の中間的な性質を持っており、太陽電池ではよくシリコンが使用される。
太陽からの光が半導体材料に当たると、半導体内のマイナスの電荷を持つ粒子が飛び出し、自由に移動できる状態になる。その移動によって電流が発生し、この電流を導線を通して取り出し電気として利用するのが太陽電池の仕組みである。
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太陽電池は、日光からの照射をそのままエネルギー変換するため、多くの分野で利用が広がっている。
ドローンの欠点はバッテリー搭載型であるために、飛行時間が短くなってしまうことだ。これを解消しようと開発が進んでいるのが、太陽電池を搭載した「ソーラードローン」だ。
ソフトバンクはアメリカのAeroVironmentと合弁で立ち上げたHAPSモバイル(2023年10月1日にソフトバンクに吸収合併)という会社で、ソーラードローン「HAWK30(ホークサーティー)」を2019年4月に発表。平均時速約110km、数ヶ月の飛行が可能であるとしている。
太陽光発電を非常用電源として活用する動きは、東日本大震災以降、防災や減災の観点から特に活発化している。東日本大震災で甚大な被害を受けた仙台市では、199ヶ所の避難所などに「防災対応型太陽光発電システム」を導入した。
また、2019年に発生した台風で大きな被害を受けた千葉市でも、避難所の182ヶ所に太陽光発電設備と蓄電池を導入する取り組みが行われている。
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電気自動車(EV)の動力源としても活用が期待されている。2022年には、オランダのスタートアップ企業であるライトイヤー社が、従来型の充電器に接続しなくても走行可能な「ライトイヤー・ゼロ(Lightyear 0)」の量産準備が整ったことを発表。この自動車のルーフとボンネットには曲面の太陽光パネルがいくつも設置されており、航続可能距離は625km、晴天が多ければ最長7ヶ月まで、太陽光発電のみで走行できるとしている。
実は、太陽電池が人工衛星に搭載された歴史は意外にも古い。1958年にアメリカが打ち上げた「ヴァンガード1号」では、1辺5㎝のシリコン太陽電池を6枚搭載。初期の人工衛星では動力源が一次電池であったため、わずか数週間の寿命だったが、同衛生は6年以上も活動を継続した。
また、現在では宇宙太陽光発電システム(SSPS)の実証実験が行われている。SSPSとは、宇宙空間で巨大な太陽電池とマイクロ波送電アンテナを配置し、太陽光エネルギーをマイクロ波やレーザー光に変換して地球に伝送したのち、地球上にある装置で電力に再変換しエネルギー源として用いるシステムのことを指す。
季節や天候に左右されずに安定的な発電を行えるだけでなく強度の高い太陽光を利用できるため、非常に期待が高まっている。
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太陽電池には、現在もっとも広く使われているシリコン太陽電池のほか、化合物系太陽電池、有機系太陽電池など、さまざまな種類が存在している。
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シリコン系太陽電池の種類としては、結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池などがある。
最も古くから市場で流通している太陽電池で、原料となるシリコン(ケイ素)を薄く切ったウエハから生成される。単結晶シリコン太陽電池と多結晶シリコン太陽電池の2つに区分される。
単結晶シリコン太陽電池は、エネルギー変換効率が20%程度と高く、さらに耐久性に優れているのが特徴。それに対し多結晶シリコン太陽電池は、単結晶シリコン太陽電池と同等の耐久性をもつ。構造的な問題から変換効率はやや劣る傾向にあるが、単結晶シリコンと比較すると、製造コストを安価に抑えることができる。
結晶構造を持たない状態のシリコンで生成された太陽電池。性質上、薄膜化が可能であるため、製造コストを安く抑えることができる。ただし、結晶系シリコン太陽電池と比べると、エネルギー変換効率は9%とあまり高くない。
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シリコンではなく、複数の化合物を用いて生成される太陽電池のこと。CIS系太陽電池、GaAs系太陽電池、CIGS系太陽電池、CdTe太陽電池などがある。実験段階ではあるが、エネルギー変換効率はシリコン系太陽電池を上回る30%以上とされている。性能が高い反面、カドミウムやヒ素などを原料としているため、有害物質流出などの懸念が指摘されている。
インジウム、銅、セレンを主な原料として生成される太陽電池。CIS太陽電池は薄膜化が可能で、かつ光吸収性に優れているため、低コストで量産化ができる。ただし、高効率化のために硫化カドミウムやカドミウムをバッファ層に用いることがあり、有害物質の流出などのリスクが指摘されている。
ガリウムとヒ素を中心とした原料から作られる半導体で構成された太陽電池。レアメタルを多用するため、原料や製造コストが高くなりやすいのが難点ではあるが、高い発電効率と放射線への耐性があることから人工衛星などの宇宙用途に用いられている。
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シリコン系太陽電池や化合物系太陽電池のように無機物を原料とするのではなく、有機物を原材料とする太陽電池のことを指す。色素増感太陽電池、ペロブスカイト太陽電池、有機薄膜太陽電池などがある。
ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造の材料を用いた太陽電池のことを指す。原料には主に鉛やヨウ素などが用いられる。当初、変換効率は3%台だったが、2017年には実験段階で21.6%まで向上した。塗布技術や印刷技術で作製ができることから、次世代の太陽電池との呼び声も高い。
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太陽電池には、非常用電源としての活用や温室効果ガスを排出しないなどのメリットがある。
大きなメリットのひとつとして挙げられるのが、災害時などの非常用電源として活用できる点だ。太陽電池そのものは蓄電できないが、蓄電池を併用することで地震や台風などでライフラインが寸断された際に自家発電が可能となる。
太陽光発電は太陽光を電力に変換するため、発電時に燃料が不要となる。つまり、運転中は温室効果ガスを排出しない。また、原料採鉱・精製から廃棄に至るまでのライフサイクル全体でみても、温室効果ガスの排出量は極めて微量とされている。化石燃料は約690g-CO2/kWhの温室効果ガスを排出するが、太陽光発電では約17〜48g-CO2/kWhと非常に少ないことがみてとれる。
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一方で、太陽電池には廃棄コストが高い、有害物質の流失リスクがあるなど、解決しなければいけない課題が多く存在する。
太陽電池の種類によっては、カドミウム、セレン、鉛、ヒ素などの有害物質が含まれている。万が一、経年劣化や破損などによってこれらの有害物質が漏れ出した場合、水質汚濁や土壌汚染を引き起こす恐れが指摘されている。
2023年6月に、一般社団法人 太陽光リユース・リサイクル協会が「再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会」の中で、リユース可能な太陽光パネルが、リサイクルに回されてしまっているケースが多いと報告している。
また、リサイクル技術が確立しつつあるものの、有害物質を含む化合物系太陽電池の場合は、有害物質を分解・除去したうえでのリサイクルや廃棄が求められるほか、コストが高くなるため、埋立処分されているのが現状である。
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太陽電池の種類によるが、寿命はおおむね20年程度とされている。ただ、温度変化や風雨、紫外線などのさまざまな要因で劣化することが報告されており、太陽光発電設備やパネルの定期的な運用・保守が必要不可欠といえる。
太陽電池は、その他の再生可能エネルギーと比較すると発電効率が悪い。風力発電が約20〜40%、水力発電が約80%なのに対し、太陽光発電は約15%〜20%だ。
原因としては、季節や天候に大きく依存していることが挙げられる。太陽光パネルで最も発電効率が良いのが25度前後といわれており、それ以上になると発電効率が悪化するとされている。
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太陽光発電は、再生可能エネルギーのなかでも温室効果ガスの排出量が少ないということで期待が高まっているが、日照時間によって電力供給が変動するため、その他の再生可能エネルギーと比較すると、依然としてエネルギー変換効率は低いのが現状だ。
しかしながら、先に述べたようにペロブスカイト太陽電池や宇宙太陽光発電システム(SSPS)などの登場もあり、今後、カーボンニュートラルやゼロエミッションを実現していくなかでは、欠かせない技術分野のひとつになることは間違いないといえるだろう。