日本や世界の半導体メーカー・会社・企業【分野別で紹介】
製造業
“世界最強”との呼び声も高い半導体大手のTSMC。2024年2月には熊本・菊陽町に巨大な工場を作ったことでその名前を聞いたことがある人も多いだろう。本記事では、TSMCがなぜ世界トップに君臨しているのか、そのビジネスモデルの特徴や強みについて解説したい。
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目次
TSMCは、1987年にモリス・チャン(張忠謀)によって設立された世界最大のファウンドリ企業だ。一般的にはTaiwan Semiconductor Manufacturing Companyの頭文字をとって「TSMC」と呼ばれることが多い。正式名称は台湾積体電路製造。本拠地は台湾の新竹サイエンスパークで世界各地に工場拠点をもつ。従業員数は2024年時点で延べ7万3000人以上とされている。
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JASMとは、Japan Advanced Semiconductor Manufacturingの略称で、TSMCとソニーセミコンダクタソリューションズやデンソーが合弁で2021年に熊本県・菊陽町に設立した会社だ。
なお、2024年2月の段階での出資比率はTSMC86.51%、ソニーセミコンダクタソリューションズが6%、デンソーが5.5%に加え、トヨタ自動車も2%の出資を行っている。
2024年内には、すでに建設済みの第一工場が生産開始予定である。第二工場も同じ菊陽町に建設予定で、2024年末にから着工、2027年末に運営を開始する見込みだ。
世界最強という名にふさわしく、半導体製造企業という大きな括りでみてもTSMCの売上高は圧倒的であり、2年連続で世界首位となっている。
また、台湾の調査会社TrendForce(トレンドフォース)が発表した2024年世界ファウンドリー市場のシェアランキングによると、2024年第4四半期もTSMCのシェアは約65%と独走状態だ。
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TSMCが2024年10月17日に発表した第3四半期決算(2024年7~9月)をみると、売上高は約235億米ドル、純利益が約101億米ドルと四半期ベースで過去最高に。
同社の時価総額は2024年7月に一時1兆ドルに到達したが、四半期決算の発表を受けて同年10月に終値で初めて1兆ドルを突破。世界9番目の「1兆ドル企業」になった。
TSMCが設立された背景には、当時の台湾の経済状況が大きく関係している。戦後復興のため、台湾はアメリカから援助を受けていたが、1960年代には支援の打ち切りがなされる。これ以降、台湾は経済的自立を目指さざるを得なくなった。
1980年代、台湾政府は技術集約型産業の発展を目指し、半導体産業を国家戦略の中心に据えた。その後、国民党政権で経済部長・財政部長を務めた李國鼎(り・こくてい)氏は、テキサス・インスツルメンツ(TI)で上級副社長の経験があるモリス・チャン氏へファウンドリ企業の設立を打診。
1987年、台湾政府と工業技術研究院(ITRI)の支援を受け、モリス・チャンはTSMCを設立した。当初はほとんど売り上げがなかったものの、1990年代初頭にシリコンバレーで設計を専門に行うファブレスメーカーが登場し始めたことを契機に、目覚ましい隆盛を遂げた。
今や世界的なキープレイヤーとして一目を置く存在となったTSMC。一体、なぜこれほどまでに強大な力をもつに至ったのだろうか?そこには、緻密に練られた戦略と圧倒的な技術力がある。
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TSMCに生産を委ねる企業は世界に500社近く存在するとされ、これらの企業との取引をとおして世界の最新トレンドを把握している。特に、Apple、AMD、MediaTek(聯発科技)、エヌビディア、Intel、クアルコムといった業界をリードする企業とも強固な関係を築いており、堅調なビジネスモデルを実現している。
2nm(2ナノメートル)技術の「N2」に向けたナノシートトランジスタ技術や、新しい「NanoFlex」技術を導入。また、1.6nm世代のA16を導入予定で、2026年末までに量産が開始される予定だ。
CoWoS(Chip on Wafer on Substrate)やSoIC(System on Integrated Chips)などの3DIC技術は、AIの高性能化に貢献。これによって、高帯域幅メモリやプロセッサコアの集積が進み、データセンター向けのパフォーマンスが飛躍的に向上している。
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TSMCの特許出願数は7年連続で台湾国内トップを維持。2023年上半期には1,171件の発明特許を出願している。
また、少し古いデータではあるが、2017年の特許庁「台湾企業の技術動向調査(追補版)」によると、TSMCの2004年から2014年の国別の特許出願累積件数を見ると、米国と中国への出願件数が圧倒的である。TSMCが以前から、競争相手となりうる米国や中国を意識して、特許を出願することで相手側の発展の牽制を行おうとしていたのがわかる。
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TSMCは長期的な視点で巨額の設備投資を続けている。特にEUV(極端紫外線リソグラフィ)技術や3nm、2nmといった次世代プロセス技術に対して積極投資を行っている。また、2023年頃からアメリカや日本(熊本県・菊陽町)など複数の国で新しい工場の建設を進めており、これによって顧客のニーズに迅速に対応できる生産体制を構築中だ。
2024年は、エヌビディアの主力製品であるAI向けサーバーに搭載する先端半導体の大型受注、Appleが2024年9月に発売した新型の「iPhone16」に搭載されている半導体の生産などによってTSMCの業績は好調だった。2025年以降も堅調に伸びるものと予測される。
ただし、米中摩擦に加えて中東情勢とウクライナ情勢なども重なり、台湾における地政学的なリスクは顕在化しつつある。TSMCもアメリカや日本、ドイツに新たな工場を建設するなど、生産拠点の分散に積極投資を行っている。今後の展開に目が離せない。