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なぜ台湾は半導体大国に成長したのか?歴史と今後の動向について

なぜ台湾は半導体大国に成長したのか?歴史と今後の動向について」

2024年、半導体ファウンドリで世界最大手のTSMCが熊本県・菊陽町に工場を建設したというニュースは日本中に衝撃を与えた。台湾は世界最大級の半導体の生産拠点として知られ、大手メーカーに使用される半導体チップの受託生産を多く手がけている。本記事では、改めて、なぜ台湾で半導体市場が隆盛したのか、その歴史や現況、台湾の半導体市場の未来について解説したい。

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 なぜ台湾は半導体業界が強いのか?

なぜ、台湾は半導体大国になったのか。その歴史と起源について紐解いていこうと思う。

 台湾における半導体業界の歴史と起源について

第二次世界大戦後、台湾はアメリカの援助を受けて経済復興が行われた。しかしながら、1960年代にはアメリカ国務省が台湾援助の打ち切りを宣言。これにより、台湾は経済的な自立を迫られ、積極的な外資導入策をとらざるを得なかった。

外資獲得を目的とした輸出拡大と地場産業の活性化を目指して、1966年には台湾南部の高雄に総面積69ヘクタールの輸出加工区(EPZ)を設置。アメリカのGeneral Instruments社が出資した高雄電子公司が、台湾で最初の半導体組み立て工場を建設した。

実は、TSMCの前にも1970年代には半導体の後工程分野で萬邦電子(現:華新科技)や華泰電子、菱生精密工業などの企業が設立されている。しかしながら、世界に進出していけるほどの規模には成長していなかった。

1980年代に入り、台湾はアジアのシリコンバレーを目指すべく、先端技術の導入を目的として新竹市に新竹科学園区(Hsinchu Science-based Industrial Park)をオープン。同敷地内には今や世界第3位の半導体専業ファウンドリである聯華電子公司(UMC)が設立された。

台湾における半導体業界の歴史

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 世界最大の半導体ファウンドリ「TSMC」の誕生と隆盛

TSMCの生みの親である張忠謀(モリス・チャン)は、ハーバード大学に入学後、2年時にマサチューセッツ工科大学(MIT)に編入し、機械工学を学ぶ。その後、当時スタートアップだったテキサス・インスツルメンツ(TI)に入社し、半導体のエンジニアリングに携わり、国際半導体事業部門の副社長まで昇格。

1985年に国民党政権で経済部長・財政部長を務めた李國鼎(り・こくてい)氏の申し入れによって、垂直統合型の半導体メーカーの立ち上げを目的として設立された工業技術研究院(ITRI)の院長に就任した。
ファウンドリ企業の立ち上げを検討していたが、当時、別の会社の半導体を受託生産することは一般的ではなく、半導体工場の建設に必要な出資集めに苦労をしたという。

そんな逆風の中で、モリス・チャンは1987年に台湾積体電路製造(TSMC)を創業。当初はほとんど売り上げがなかったものの、1990年代初頭にシリコンバレーで設計を専門に行うファブレスメーカーが登場し始めたことを契機に、目覚ましい隆盛を遂げた。

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 台湾が占める半導体業界の世界シェアはどのくらい?

台湾の市場調査会社であるトレンドフォースが行った調査によれば、2023年の世界の半導体ファウンドリの売上高は1,174億7,000万ドルだった。TSMCのみで60%、聯華電子公司(UMC)、力晶積成電子製造(PSMC)、世界先進積体電路(VIS)なども含めると台湾だけで全体の67%を占めている。また、全世界のIC輸出総額に占める台湾の構成比は17.1%となっている。

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 台湾の半導体メーカーが日本で工場を建設している理由

なぜ半導体大国として名高い台湾が、日本を筆頭に世界各地で工場を建設しているのだろうか。そこには大きく2つの要因が存在する。

まず1つがリソース不足だ。先に述べたように、現在、台湾は世界の半導体ファウンドリの売上高でトップを誇る。しかしながら、現在は生成AIや電気自動車などの普及で、半導体需要は年々増加している。近いうちに、市場拡大のペースに生産能力が追いつかなくなると見込まれているのだ。それは、高度人材が不足していることもさることながら、物理的な電力や水、土地といったリソースの問題もある。

もう1つが米中対立に伴う規制強化の影響だ。現在、台湾のICにおける最大輸出国は中国で半分以上を占めている。米国や同盟国による対中規制が強まれば、事業成長への影響は避けられない。たとえば、米国商務省が公表したCHIPSプラス法では、2023年11月に中国を含む懸念国への投資や既存設備の拡張を制限する条項を発効している。

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 TSMCだけではない!台湾にある半導体メーカー・企業・会社

台湾にはTSMC以外にも世界的シェアをもつ半導体メーカーや企業が存在する。ここでは、そのいくつかをピックアップして紹介したい。

 台湾積体電路製造(TSMC)

世界初の半導体専業ファウンドリ企業で、2023年時点で売上高は約10兆円、世界の半導体ファウンドリでシェア60%近くを占めている。主要取引先は米Apple、インテル、エヌビディア、トヨタ自動車、キヤノンなど、そうそうたる面々が揃う。

また、2024年7月にはTSMCの時価総額は一時1兆ドル(約160兆円)となり、アジアで首位、世界で8番目に価値の高い企業になった。

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 聯発科技(メディアテック)

台湾で最大の半導体ファブレス企業。蔡明介氏が1997年に設立した。主にモバイルデバイス、テレビ、ネットワーキング、およびIoT向けのチップセットの設計・開発を行っている。アメリカのQualcomm(クアルコム)と並び、スマートフォンやテレビ向けチップで世界トップクラスのシェアを誇る。

 聯華電子公司(UMC)

1981年に新竹市・科学工業園区に設立された会社。当時は、音楽用ICや電子時計用IC、通信用ICなどの製造・販売を行う半導体メーカーであったが、1995年に半導体ファウンドリ企業に。今では世界の半導体ファウンドリの売上高シェアが6%とTSMCに次ぐ規模を誇る会社へと成長を遂げた。

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 大聯大投資控股(WPG)

WPGは、黄偉祥(サイモン・ホワン)氏によって設立された半導体商社で、シェアは世界第3位。WPGは特に中国、台湾、日本、韓国、東南アジアなどで強力なネットワークをもつ。また、M&Aや合弁会社の設立、パートナーシップを通じて、アメリカやヨーロッパにも販路を拡大しており、世界中のエレクトロニクスメーカーにサービスを提供している。

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 まとめ

台湾が半導体大国になった背景には、戦後に経済的な自立を迫られたところから始まっている。現在は、米中摩擦だけでなく世界情勢の不安定化によって、やや先行きが不透明な部分もある。

TSMCを中心に台湾の半導体企業は海外への分散投資を積極的に行っている。最大の輸出先である中国からの脱却を図り、欧米圏や東アジアへの市場展開をすることができるのか。今後の動向に注目したい。

最新版「半導体市場動向」