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「ステージゲート法」で製品化や事業化の不確実性のリスクを下げる!そのポイントとは?

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製品ライフサイクルが短くなりコモディティ化が進む現代において、ものづくり産業における新製品や事業の開発はますます困難を極めている。VUCA時代と呼ばれ不確実性が高まる中、筋の良いテーマを見つけ製品化・事業化へ結びつけ成功させるにはどうしたらよいのだろうか。

この記事では、近年採用している企業も多くなっている「ステージゲート法」についてご紹介する。開発プロセスの一連の流れを管理し、採算性に着目した手法であるステージゲートの基本とその本質を押さえ正しく理解することで、テーマやアイデアを効果的にマネジメントし、新製品や新規事業を創出する一助としていただきたい。

 ステージゲート法とは

ステージゲート法は1980年代に北米においてマクマスター大学のロバート・クーパー教授とその同僚により開発された方法論である。ハイテク製造業で多く採用され、日本においては90年代後半より普及している。

ステージゲート法は、技術開発・製品開発を事業として成功させるためのプロセスの管理方法であり、ステージ(開発活動)とゲート(テーマ評価ポイント)でテーマを絞り込んで、より採算性の高いテーマを導くことができる手法である。

開発活動を行っていく上で、都度ゲートでその開発活動をチェックし、評価基準に満たないものをふるい落としていく。ステージは6つ、ゲートは5つあり、ゲートの条件をクリアすることで次のステージに上がることができ、最終的に残ったテーマを事業化・製品化する。

ゲートで検討すべき項目や判断基準に基づいて承認/中止を行う

ステージゲート法は、製品や事業が成功するか否かの評価が主題であり、技術・製品そのもののクオリティなどをメインに評価するわけではない。各段階で、マーケティング・技術・生産方法などのさまざまな視点から検証して評価を行う。また、ステージゲート法は固定的なものではなく、それぞれの開発機関・企業に沿った形で設計し、次第に進化・発展させていくものである。

 ステージゲートの優れた特徴とは

ステージゲート法の特徴のひとつとして、事業開発における不確実性の低減が挙げられる。事業性の低いプロジェクトについては初期段階で除くことができる。また、プロセス全体において、市場からのフィードバックや評価を得るようになっているため、市場ニーズとのずれがないかを都度確認することができる。ニーズとの齟齬に気がついた場合、そこで軌道を修正するか開発をストップさせることで、移り変わりが早い市場環境に適応させやすくなる。

さらに、早い段階で事業性を視野に入れて取り組むため、リスクマネジメントが行いやすくなる点も特徴として挙げられる。たとえば、評価基準が不明確なため事業化というゴールに辿り着く道筋を見つけられずに開発が滞留してしまうことや、最終段階で致命的な問題が発覚するというリスクを減らすことができる。プロセスの早い段階から「仮説」として事業性を意識し評価することで、開発の停滞や出戻り、中止となるリスクを早めに認識し対処できる。そのため資金や時間などのリソースを効率的かつ最小限で投入できるのだ。

 ステージゲート法が必要とされる背景

急速に変化する社会環境において、かつて「ものづくり大国」と呼ばれた日本の従来のやり方は限界を迎えつつある。これまで得意としていた、洗練された高い技術力による高品質な製品だけでは勝てないという現状が続いている。デジタル技術の進展とグローバリゼーションにより市場はますます多様化し、海外企業の台頭により最先端技術の低コスト化が進み、厳しい状況が続くと予測される中、どういった戦略を取るべきかを考えることは急務である。

また、これまでは声の届く一部の顧客の要望に応えていれば問題なかったが、これからは不確実性を前提として、現時点ではまだ見えていない潜在顧客のニーズを探り、ターゲットの要望を深く理解する必要がある。つまり、研究開発でも顕在化している目先の顧客だけでなく、より大きな集合体である市場の声を捉えていかなければ革新的な製品や技術は生まれないということだ。不確実性の低減を特徴とし、全プロセスにおいてテーマやプロジェクトを事業性・採算性という視点で評価し、市場と双方向の対話を行い市場理解の工程が組まれているステージゲート法は理にかなっているのだ。

 ステージゲート法の誤解

ステージゲート法は残念ながら誤解されていることも多くある。たとえば、よくあるのが「デザインレビューとの混同」や「単なる評価プロセスという認識」だ。

 デザインレビューとの混同

デザインレビューとは、品質・納期・コスト(QCD)などの設計開発の条件を満たす結果を出すことができるかをフェーズごとに設計評価する手法だ。段階的に評価する機会がある点はステージゲート法と類似しており混同されやすい要因といえるが、デザインレビューとステージゲートでは達成すべき目的が異なっている。

デザインレビューは製品として技術・品質面で失敗がないかという点に着目しており、ステージゲート法では事業性に着目している。またデザインレビューはその目的が製品のQCDの確実な達成であることからテーマ継続が前提であるが、後者はテーマの事業性を検討することから途中で中止することも辞さないという点でも異なる。つまり、ステージゲートをデザインレビューのように捉えてしまうと、適切な判断による切り捨てが行われず、事業性の薄いテーマが最終まで残り続けてしまうことになる。

 単なるステージ分けした評価プロセスという認識

ステージゲートについて、単なる複数の段階から構成されたテーマ評価プロセスだと認識していた場合、検討や評価項目が曖昧になり、評価に漏れやばらつきが生まれて事業性の判断の根拠としてそぐわなくなってしまう可能性がある。これでは本来のステージゲート法の目的を果たしておらず、形骸化しているといえる。

本来のステージゲート法とは、開発テーマを効果的にマネジメントすることによって、より事業で成功率を高めるための段階的方法論である。誤解なくステージゲート法を利用するには、戦略的目的を持つものであることを理解し、各段階でどれくらいのレベルまで検討すべきかを明確にする必要がある。評価にばらつきが出ないように、項目が曖昧で抽象的なものとなっていないか、自社の状況に一致したものとなっているかなど、全体を通して確認することが必要である。

 効果的な運用のためのポイント

ステージゲート法を効果的に運用するためのポイントには以下3点がある。

①アイデアの多産多死が前提
技術領域に特化した企業では少産少死型の傾向があるため、前提が異なることに注意が必要である。ベンチャーキャピタルが発達しており、研究資金が豊富な北米で生まれた手法であるため、少産少死の日本的開発のまま導入すると、アイデア・テーマが枯渇する恐れがある。アイデアやテーマが少なすぎてしてしまうと、事業性の低いものまで残り続けてしまう可能性がある。初期段階であるテーマ創出ステージでも事業性を加味することが必要ではあるが、この段階で製品や事業の成功を判断することは難しい。後続のゲートによる評価項目に基づいた調査や比較で洗練されていくということを考慮して、多くのアイデアをステージに乗せることが重要だ。

②ステージごとに段階的に投資
ステージゲート法は不確実性に適応したリスクマネジメントに優れた方法論である。初期ステージでは大きな投資を避け、段階的に予算を投入していく段階的投資がステージゲートと相性が良い。

③評価の段階的精緻化
初期段階では事業化するかどうかは不透明で不確実な部分が多く、評価するための情報が不足している場合がある。そのため、初期ステージでは抽象的・定性的な基準を用いて、段階的に具体的・定量的な指標に変えていく方が有効だ。実現可能性が高まれば、市場調査結果の消費者アンケートなどの情報を盛り込んでいくなど、具体的な数値の理論は段階を踏んで導入していくと良い。

このような立て付けのため、初期ゲートの段階で承認と中止の判断を決めかねるものも出てくるだろう。その場合、たとえ次の評価で判断することにしてもリスクは少なくて済むため、次のステージに進めてみる方がいいだろう。しかし、中盤から後半のステージでは多くのリソースを割くことになるため、中止の判断を躊躇してはいけない。「不確実性が高いから製品や事業は出してみないとわからない」という意識から評価があまくなるのは、形骸化する一因となるだろう。

 ステージゲート法の評価軸

ステージゲート法は以下のような評価軸を用いて各ステージにおける事業性を判断する。

参照記事「“ベストプラクティス”に基づく徹底評価-ステージゲート法は進化するプロセス」※)を基にストックマークで作図

 1.戦略との適合性

ステージゲート法での評価は、事業戦略や技術戦略などの経営戦略に沿った取り組みであるかどうかが重要な基準となる。先行きが見えない不確実な市場環境だからこそ確固たる戦略が必要だ。この戦略と照らし合わせ評価を行うことで成功の確率を高め、自社の強みを強化することにつながるのだ。

 2.競争優位性

この項目では「製品の差別化」と「顧客価値の実現」の2つの視点で評価する。激化する競争の中で、競合との差別化については高い意識で取り組めている企業も多いだろう。しかし、顧客価値の実現の視点については、差別化ほど取り組めていないのではないだろうか。モノづくりからコトづくりと言われるように、以前にも増して顧客価値の重要性が高まっている。ステージゲート法においても、顧客価値に応えられるかという問いを各段階で持ち続け市場との対話を絶やさないことが重要だ。

 3.市場の魅力度

市場の規模や成長性・将来性があるかどうかも重要な評価基準である。今の市場状況の調査は多くの企業が取り組んでいることだろう。しかし、不確実性が高まる中、市場の成長性や将来性を測ることも今後のカギであることは間違いない。数年後から10年後の将来の動向を先回りして予測するためには、外部企業や機関などの情報やレポートを調査し、定期的な分析を続け判断する必要がある。

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 4.コアコンピタンスの活用度

自社のコアコンピタンスが生かせるかどうかも欠かせない評価である。自社の能力を越える領域に手を出すと失敗する可能性が高まる。自社の持つ独自の魅力を最大限活用できるかどうかは忘れてはいけないポイントなのだ。たとえば、イノベーションで有名な3Mでは、決められたプラットフォーム技術を使った開発テーマでないと正しく評価されない。自社のコアコンピタンスに沿ったテーマであれば、失敗したとしても知識や経験として技術が洗練されることにつながるからだ。また、これからはコアコンピタンスと顧客価値をつなげ、自社が勝てる領域を創出していくことにも積極的に取り組む必要があるだろう。

 5.技術の実現性

魅力的なテーマであっても技術的に実現できなければ話にならない。実際に実現可能かどうかの技術実現性の検討は外せない。また、顧客ニーズに自社技術で応えられるか、それにかかるコストはどれくらいか、その技術の信頼性はどれくらいあるか、競合が持っている技術の状況はどうか、特許権利の取得状況はどうかなど、顧客ニーズを中心に技術周りの状況を網羅的に把握し、評価できなければならない。

 6.財務リターンとリスク

財務リターンとは、事業性を第一に見て新たな製品や事業で利益を出すことができるかを検討することだ。初期のゲートで財務リターンを検討しても正当な評価ができないため、徐々に精緻度のレベルを上げていく必要がある。その過程で重大なリスクの認識や、リスクに対する対応策が検討できているかどうかも重要なポイントである。

 まとめ

これまでにない速さで変化する現代において、長期間の安定を約束される製品や事業はない。特にものづくり企業は、これまで以上に新たな製品や事業を創り出していくことが求められている。また、効率的な製品化や急速に変化する社会環境に対応した新しい価値創出のためには、技術開発の段階から事業化や製品化を見越して、市場を意識した広い視野が必要となる。ステージゲート法は、初期段階から事業性を意識する構造となっている点、また全プロセスにおいて市場と双方向の対話をしながら進めることから、現代に適した手法であるといえる。

研究者も革新的なテーマや事業化につながるアイデア創出のため、これまでの固定された領域だけではなく、市場や顧客価値といった視点も含め、幅広い情報に目を向けていくことが必要になってくるだろう。

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 Reference

※)「“ベストプラクティス”に基づく徹底評価-ステージゲート法は進化するプロセス」
https://enterprisezine.jp/bizgene/detail/4566
「経営者の意志決定をサポートするステージゲート法-誤解と本質」
https://enterprisezine.jp/bizgene/detail/4526