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技術ポートフォリオとは?技術ポートフォリオの図表や戦略を決める方法を解説

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ポートフォリオとは資産を複数の金融商品に分散投資を行うこと、またはその金融商品の組み合わせのことを指す。リソースを分散させて組み合わせを考えるポートフォリオの考え方は、金融関連のみならず、ビジネスや社会資本の舞台においても汎用性が高い。製造業においても、事業ポートフォリオや製品ポートフォリオなどのさまざまなポートフォリオが活用されている。

本記事ではそのなかでも、技術ポートフォリオに焦点をあて、概要のほか、図表の作成方法、戦略の立て方について解説する。

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 技術ポートフォリオとは

技術ポートフォリオは、特に研究開発や技術戦略を策定する場合によく使われている。自社の保有している技術の組み合わせを考え、どの技術が現在市場競争においてどのような立ち位置であるかを客観的に測ることができる。ポートフォリオで使用する指標にはさまざまなものがあるが、自社の保有する技術を、同一の指標をもってしてポートフォリオを作成することで、それぞれの自社技術の状況の把握が可能になる。この把握によって、自社の状況について総括的に、また事業分野別に捉えることが可能になり、自社の技術アセットにおける強みや弱みを発見することができる。

技術ポートフォリオの指標でよくある組み合わせは、その技術が自社にとってどれほど重要であるかという「技術重要度」と、自社の持つ技術が他社技術と比較して強いかどうかという「保有技術水準」である。

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 技術ポートフォリオの重要性

技術ポートフォリオの重要性は、技術分野の戦略が企業の進退に大きく関わる製造業において特に見逃せないものである。製造業にとっては、PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)といった汎用的な事業や製品のポートフォリオのみを用いて企業の経営判断を行うことはリスクが高い。なぜなら各々の事業や製品はそもそも自社の持つ技術をルーツに持ち、密接な関連性を持っているため、ひとつの事業を止めることによってほかの事業へ何らかの影響を及ぼす危険性があるからだ。製造業の場合は、技術ポートフォリオを併せて用いることによって、複数事業の根源となる技術を客観的に見直すことができ、自社技術の健全性を評価するだけではなく、どこに資源を投入するかといった投資判断が行いやすくなるのだ。

 技術ポートフォリオを用いて戦略を決める方法

技術ポートフォリオが経営戦略を策定する際に有効なことは示したが、ここでは具体的な技術ポートフォリオの作成と活用方法についてご紹介する。

 自社の技術を整理する

まずは自社が保有する技術について整理する必要がある。どのような技術があるのかについて一覧化することで可視化と明確化ができる。一覧化する際には、大・中・小と分類の段階分けを行うことが一般的である。その分類は、自社にとって適切な粒度であることが重要だ。

また、同じ技術であっても、その技術を搭載する商品によって発揮する効果が異なるため、技術の重要度が商品によって変わる可能性がある点にも注意が必要だ。つまり、1つの技術の評価が1つとは限らないのである。この点を踏まえた上で技術ポートフォリオを作成しなくてはならず、これが満たせていない場合、分析が十分でない可能性が高い。

技術の棚卸しについての記事はこちらを参考にしていただきたい。
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 技術ポートフォリオの軸を決める

技術ポートフォリオを作成する場合、横軸、縦軸の設定はさまざまなものが考えられるが、一例として下記が挙げられる。

・技術重要度
・保有技術水準(自社の技術力)
・技術の成熟度

 技術重要度

技術の重要度は、対象の事業が競合他社などに与える影響の度合いと、技術が産業においてどの程度利用できるのかという具体的な度合いの2つの視点から考えることができる。

戦略技術
競合他社などに与える影響、産業における利用度合いのどちらともが高く、戦略を実行する場合に重大な影響を持つ可能性のある具体性の高い技術を指す。市場内で競合他社との差別化を達成するための技術だ。

■基盤技術
競合他社などに与える影響の度合いは低いが、技術が産業において利用できる度合いは高く、事業を実施するために不可欠な技術が基盤技術である。製造業界においてはどの企業も所有しているものであり、差別化には影響しにくい。

■途上技術
競合他社などに与える影響の度合いは高いが、産業における利用度合いは低く、どのような指向を持った技術であるかという方向性は定まっているが開発途上の技術を指す。

■未確立技術(萌芽技術)
競合他社などに与える影響、産業における利用度合いのどちらともが低く、今後事業貢献への期待はあるが、実現可能性も不明確な技術を指す。

または、単純に「事業を商品化するにあたり、その技術の必要度合い」で表すこともある。

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 保有技術水準(自社技術の水準)

保有技術水準は、他社が保有する技術と比較し自社技術の優位性について以下のように5段階に分けることができる。

・優勢
・強い
・普通
・弱い
・劣勢

水準の「普通」とは、事業の技術的な競争力を市場の中で保つことはできるが、ニッチな市場以外では技術リーダーになれないようなものである。業界におけるリーダー的存在である、または技術開発において開発スピードや方向性を支配するような存在であれば「強い」もしくは「優勢」、業界において技術面で競合他社に追随するような状況で、独自路線を取ることができず、さらには競合他社に対して脅威を与えることができないような場合は「弱い」もしくは「劣勢」と判断する。

 技術の成熟度

技術の成熟度は、技術のライフサイクルと言い換えることができ、一般的に以下の4つの段階に分けることができる。

■導入期
新しい技術が基礎研究段階で成長している時期だ。その技術の信頼性や将来性は不透明な部分が多く、特にその技術が基礎的な技術であった場合、顧客ニーズとの結びつきが不明確であり、将来的にどのようなものになるのかなどの選択肢が多く、流動的である。

■成長期
技術に対する信頼性が生まれ、参入企業が加速度的に増加し、顧客ニーズに応じた応用研究と、新しい市場への商品投入が進む時期である。

■成熟期
既存・新規市場の飽和により、応用研究や新規参入企業の数が減ってくる時期。市場規模の拡大にも歯止めがかかり、その技術の開発や改良がボトルネックとなる可能性がある。

■衰退期
新しい代替技術の登場によって、その技術が衰退していく時期。

これら技術が生まれてから衰退していくまでの4つの段階を成熟度として表現することができる。

 技術ポートフォリオを作成する

整理した技術と決定した軸で技術をマトリクス図にまとめる。例として、縦軸を自社技術の重要度、横軸を自社技術の水準とし、円の大きさを市場規模として、以下のように作成することができる。

Excelの表に必要数値を入力
表からバブルチャートを作成

 市場調査を行い技術周辺の情報を集める

 将来の技術のニーズについての情報を集める

技術ポートフォリオの分析を進めるためには、技術に関する市場の調査と情報収集を行うことが必要不可欠である。現在の状況だけでなく、将来の社会や技術トレンドなどの未来を見据えるための情報を集めていくことも大切だ。着眼するポイントとしては以下のものが挙げられる。

①将来の社会はどうなりそうか?
②将来の社会における、産業の位置づけはどのようなものか?
③どのような技術が必要になるのか?または、どのような技術が可能になるのか?

漠然とした情報ではなく、政府や各社が発表する現時点で研究や取り組みが進んでいる技術情報や発表などの具体的かつ詳細な情報を集められることが望ましい。

未来思考であるバックキャスティングの具体的なやり方については以下の記事を参考にしていただきたい。
「バックキャスティングとは?研究開発型の事業開発に不可欠な未来思考を徹底解説」
→記事を読んでみる

 顧客が抱える課題を明確にする

いかに技術を活かした商品を開発したとしても需要がなければ売れることはない。また、既にさまざまな商品があふれる市場で確実に顧客を掴むためには、特定の顧客層の需要にマッチすることが近道といえるだろう。顧客課題は顧客ニーズにつながるため、顧客が現状で抱えている課題を明確にすることが重要だ。

顧客課題の検討の方法は、具体的には事業ごとに主要となる顧客を特定することから始める。ターゲットとなる顧客を明確にして、抱える課題を検討していくことが必要だ。顧客情報については、既に自社が持つ営業情報や知財情報などを適切に併用することで、顧客像を具体的に作り上げることができ、顧客の持つ課題についてイメージがしやすくなるだろう。

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 技術戦略の策定

技術ポートフォリオを活用し、技術がどの段階にあるのかを客観的に判断を行う。

さらに、マトリクス図だけに捉われず、以下のような戦略も重要である。自社の状況に合わせ、さまざまな視点を持って多角的に判断を行いたい。

■基盤技術の強化
重要な技術への投資は継続し強化することで、競争優位性を高め、利用分野を広げることや、関連する技術や発展技術が期待できる。

■新たな技術の実現
新規の分野や次世代技術といった技術開発は企業成長を考える上で欠かせない。競争優位性の確立を見込める技術を開発することができれば、企業にとっていい影響があることは間違いない。

次世代技術に関する記事はこちらがおすすめだ。
「注目の次世代技術は?未来の市場を担う技術の調査方法を比較!」
→記事を読んでみる

■開発途中の技術の推進
技術としての方向性は定まっているが、いまだ開発途上となっている技術を推進させ、実用可能な段階にすることを目標とする。

 技術ポートフォリオを作成する際のポイント

前提条件が不十分であれば、ポートフォリオの有効性は低下し、望むような結果を得られない恐れがある。以下のポイントを念頭に置き、効果的に技術ポートフォリオを活用したい。

 技術の棚卸を正しく行う

まずは技術の棚卸しを正しく行い、自社が保有する技術がどのようなものかを整理できていることが技術ポートフォリオで重要なポイントとなる。所属する部署のみならず、他部署間で技術の共通認識を持つことは非常に大切である。同じ技術であっても、部門が異なるなど、さまざまな理由によって認識に齟齬が生まれる場合があるからだ。認識に相違があるままだと、ディスカッションを有効に行いにくい。自社の保有技術の棚卸しを行い、整理することで予測される混乱を回避することができるだろう。

 できるだけ客観的なデータを集める

技術ポートフォリオにおける縦軸、横軸の2つの軸は、市場における自社の技術水準や技術の成熟度などといった、数値で具体化ができないものだ。このため、説得力のあるデータを取りにくいといえる。しかし、ポートフォリオを作成する場合には、具体的な理由などの裏付けなどによって人の納得を得られるようなものにすることが大切だ。定量的なデータを根拠とすることが難しい場合は、技術ポートフォリオにおける位置付けについて、説明根拠となるような市場や競合他社の状況、自社の保有技術、さらには顧客ニーズの動向といった情報を活用することがおすすめだ。これらの情報は、ニュースや各企業のプレスリリース、新しい技術の発表、論文などのオープン情報を活用すると良いだろう。

 定期的な更新が必要

技術ポートフォリオは一度作って終わりというものではなく、定期的に更新していく必要がある。技術ポートフォリオを有効活用するためには、毎年続けて作成し、変化を追っていくことが大切だ。技術ポートフォリオの変化を見ることで、意思決定をより戦略的に、かつ経営陣の理解を得やすくすることができるのだ。

 まとめ

技術ポートフォリオは自社の保有する技術を見つめ直し、資源分配を考える際に有効な手段である。しかし、前提とする情報が不確かであったり、データや根拠が不十分な箇所があれば有効性は下がってしまう。より良い技術戦略を策定するためにも、気をつけるべきポイントを考慮して、正しく活用することが大切だ。

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