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日本の半導体業界はなぜ衰退したのか?歴史と今後の動向について解説

日本の半導体業界はなぜ衰退したのか?歴史と今後の動向について解説

1980年代は「日の丸半導体」として世界を席巻するほどの勢いがあった日本。しかし、1990年代後半には他国に追い抜かれて失速していった。なぜ、当時世界シェア首位だった日本が凋落するに至ったのか。本記事では、日本国内における半導体の歴史と衰退に至った経緯、そして現在と今後の動きについて解説していく。

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 日本の半導体産業の歴史と成り立ち

ここでは、日本の半導体産業の歴史から「日の丸半導体」と呼ばれるようになるまでの軌跡について紹介していこう。

 半導体産業の礎を築いた「ソニー」

半導体そのものの起源は、およそ150年前まで遡る。1874年、ドイツの物理学者であるカール・フェルディナント・ブラウン氏が半導体の性質を有する鉱石の整流作用を発見したのが最初とされている。日本の半導体産業の歴史は、1948年に発明されたトランジスタとともに始まった。

東京通信工業(現:ソニー)は、1953年にウェスタン・エレクトリック社から製造特許を取得し、ゲルマニウムトランジスタの生産を開始。そこから2年後の1955年には日本初のトランジスタラジオ「TR-55」を発売。この出来事は、その後の日本の半導体産業の礎となり、世界中の研究者に大きな影響を及ぼした。

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 1960年初頭に、日本は世界最大のトランジスタ生産国へ

日本の半導体産業の隆盛を語るうえで外せない人物の1人が西澤潤一(にしざわ・じゅんいち)氏である。1953年には光を電気に変換する基礎理論を発表し、光通信を可能にする技術を次々と開発。そのほか、PINダイオードや静電誘導トランジスタ(SIT)などの発明も行った。また、1961年には産学協同で研究を進める「半導体研究所」を設立。光ファイバーやLEDなど我々の生活に欠かせない先端技術の研究成果を実用化した。なお、西澤氏の半導体関連の特許保有件数は世界最多レベルとされる。

1950年代後半から1960年代初頭にかけて、日立、日本電気、東芝など、大手電機メーカーが次々と国内にトランジスタの生産工場を新設し、世界最大のトランジスタ生産国となった。1964年4月にはアジアで初めて経済協力開発機構(OECD)に加盟し、資本取引の自由化や貿易自由化が進展。

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 1980年代には半導体産業で世界シェア首位に

1970年代からは、戦後復興からの経済成長をあいまって半導体産業は躍進を遂げた。1970年代にはLSI(大規模集積回路)やDRAM(Dynamic Random Access Memory)の開発に注力。着実に地肩をつけていき、ついに1986年には半導体産業売上ランキングにおいて日本企業がTOP3を独占した。半導体市場で圧倒的なシェアを誇っていたことから、当時は「日の丸半導体」と呼ばれるようになった。

 日本の半導体業界が衰退してしまった理由とは?

かつて、「日の丸半導体」と持てはやされるほどに隆盛を極めた日本だが、1990年代に入ってからその影は薄くなってしまった。一体なぜ、日本の半導体産業はここまで衰退してしまったのだろうか?主な要因として下記の3つが考えられる。

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 日米半導体協定による貿易規制

日米半導体協定は、1986年9月2日に日米間で交わされた貿易協定のことを指す。この頃、アメリカは日本企業に対してダンピング提訴を行っており、貿易摩擦は深刻なものになっていた。詳らかな合意文書は公表されていないが、同協定で取り決めされたことは、大まかに以下の5つである。

・日本市場における海外性半導体シェアを20%に引き上げる(1991年8月第二次で更改)
・第三国へ輸出される半導体3品目のコストと価格を監視
・アメリカへ輸出される半導体6品目のコストと価格を監視
・ダンピング調査の中断
・協定期間は5年間

米国市場でのシェア拡大が制限されるため、日本への影響は計り知れず、アメリカや韓国の追随を許してしまった。

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 マーケット変化への対応が遅れた

日米半導体協定だけでなく、当時、日本企業がマーケットの変化に対応できていなかったことも1つの要因とされている。20世紀終盤から21世紀にかけて、通信機器や家電製品からパソコンやスマートフォンへと需要が移り、品質重視から大量生産が求められるようになった。

また、世界的には水平分離型(ファブレス・ファウンドリ)のビジネスモデルが主流となっていたが、日本企業は従来の垂直統合型から脱却することができず、遅れをとってしまったとされる。

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 開発投資が不足していた

当時、バブル崩壊で不況に見舞われたことに加え、日本企業は複数事業のうちの1つとして半導体製造を行っていたため、技術開発への積極投資を行うことができなかった。そんななか、韓国や台湾、中国は国を挙げて大規模な投資を行い、結果的にTSMCやサムスン電子、SKハイニックスなど、世界トップクラスの半導体企業を創出するほどの急成長を遂げている。

 日本の半導体業界の現状について

2024年現在、日本の半導体産業はどのようなポジションにあるのだろうか。

 日本国内の半導体企業の世界シェアや売上高ランキングはどのくらい?

かつて、日本は世界シェア50%以上を誇るほどの勢いをもっていたが、2019年には10%、2021年には円安の影響によって9%にまで低下した。

日本の半導体産業の国際的なシェアの推移
経済産業省「半導体戦略(概略)」より
https://www.meti.go.jp/press/2021/06/20210604008/20210603008-4.pdf

しかし、日本の半導体市場が縮小しているわけではない。アメリカのKnometa Researchの調査レポートによれば、日本の半導体生産能力は2021年末時点で15%程度だ。これは、TSMCやサムスン電子など外資系企業の工場が建設されていることが関連していると推測できる。

 日本の半導体の強みは?

日本の半導体の強みは、ずばり「半導体製造装置」と「半導体部素材」だ。日本の半導体製造装置の世界シェアは米国に次ぐ31%で、特にリソグラフィ装置、蒸着装置、エッチング装置などの高精度な製造設備で強みをもつ。

主要部素材では世界トップの48%のシェアを誇る。たとえば、シリコンウェーハ市場でみると、2023年度の世界売上高は、信越化学工業が1位、SUMCOが2位となっている。

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 日本の半導体関連の主要企業・メーカー

半導体の業界には、大きく「半導体材料メーカー」「半導体製造メーカー」「半導体製造装置メーカー」「半導体商社」の4つの企業群が存在する。その中でも、今回は「半導体製造装置メーカー」と「半導体部材料メーカー」に絞って、いくつか主要企業やメーカーを紹介する。

 半導体製造装置メーカー

半導体製造装置は、シリコンウェーハから電子デバイスを作るための特殊な装置を開発・販売する企業のことを指す。半導体の製造は複数のステップから成り立っており、リソグラフィ、成膜、ダイシング、洗浄などそれぞれのステップで異なる装置が使用される。

 東京エレクトロン

東京エレクトロンは、1963年に設立された大手半導体製造装置メーカーで、半導体製造におけるエッチング装置や成膜装置の分野で非常に高い評価を得ている。コータ・デベロッパ、フォトレジストの塗布の領域では90%近くと圧倒的な世界シェア率を誇る。

 SCREENホールディングス

特に半導体の「洗浄装置」分野で強みを持つ半導体製造装置メーカー。2022年時点でのデータでは枚葉式洗浄装置が33%、スピンスクラバーが53%、バッチ式洗浄装置が48%と、製品ドメイン別でも世界市場シェアNo.1を記録している。

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 半導体材料メーカー

半導体材料メーカーは、半導体の材料となるウェーハや原板、組立時のチップを固定するための材料など、半導体の製造工程で必要不可欠な部材や材料を提供する企業だ。半導体の各製造プロセスで使用される高品質で専門的な材料を供給し、技術革新を下支えする役割を担っている。

 信越化学工業

1926年に信越窒素肥料株式会社として発足。元々は石灰窒素の製造を行っていたが、、1940年に現在の社名に変更し、シリコンや塩化ビニル樹脂など事業拡大をした。現在はシリコンウェーハと塩化ビニル樹脂市場で世界トップシェアを誇る。

 SUMCO

住友金属工業と三菱マテリアルが1999年に共同設立したシリコンウェーハの素材開発を行う専業メーカーだ。シリコンウェーハの分野では、信越化学工業に次いで世界シェア2位。また、最先端ロジック用のエピタキシャルウェーハ分野では50%以上のシェアを占めている。

そのほかの半導体メーカーもチェック↓

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 今後、日本の半導体は復活するか?動向と未来について

WSTSが公表している日本の半導体市場動向のレポートによれば、2024年は前年と比較して4.6%成長すると見込んでおり、市場規模は約6兆8,670億円に増えると予測している。また、2025年は前年比9.3%とさらに成長が加速すると見込んでいる。
半導体産業において、一時の勢いを失ったものの、「半導体製造装置」と「半導体部素材」など日本独自の部分では世界シェア首位を誇る分野もある。

今後、電気自動車、IoT、AI、6Gなど、さまざまなキーテクノロジーが加速し、半導体のニーズはますます増えるだろう。商機は常に潜在的に眠っている。自社がおかれている業界にとらわれず、さまざまな先端技術のトレンドに目を光らせて、そこから得られた知見を自社の新規事業開発や研究開発に活用して欲しい。