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サーキュラーエコノミーは循環型経済ともいい、資源の持続可能な利用と環境への負担の軽減に貢献し、同時に経済的な機会を創出することを目指す経済システムだ。有限な資源を浪費し、環境への負荷を増加させるリニアエコノミー(直線型経済)からの脱却を図る考え方である。この記事では、サーキュラーエコノミーに取り組む企業の実践事例についてご紹介する。
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サーキュラーエコノミーの実際の取り組み事例を紹介する前に、まずはサーキュラーエコノミーについて簡単におさらいしたい。
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サーキュラーエコノミー(Circular Economy)は、これまでの経済の中心的な仕組みであったリニアエコノミー(Linear Economy)からの脱却を目指す仕組みである。リニアエコノミーを主流とするこれまでの経済社会では、地球の資源を消費して捨てるという直線的な資源利用が一般的であった。しかし、有限な資源を浪費し、環境への負荷を増加させる仕組みによって、地球環境は汚染され、生態系や気象に大きな影響が出ている。この流れを変えるために提唱され実践が試みられているのが、資源を最大限に活用し、さらに再利用を可能にすることで、消費して捨てるのではなく永続的に利用し続け資源を循環させようとするサーキュラーエコノミーなのである。
サーキュラーエコノミーが注目される背景として、地球環境の汚染問題や資源不足が挙げられる。これは、人類のこれまでの大量生産、大量消費を行う経済システムが大きく影響を与えており、近年深刻さを増している。また、廃棄物の量が増加していること、利用している資源にも限りがあり、今後も変わらず新しい資源を際限なく使用できるとは言えないことなどからも、今ある資源を最大限有効に活用し、廃棄物をできるだけ排出しないようにする経済活動が求められている。サーキュラーエコノミーは、人類が経済活動を継続するためにも必要不可欠な仕組みである。
サーキュラーエコノミーへの取り組みは、地球環境の改善だけでなく、企業活動にとってもメリットがあるといえる。ここでは企業がサーキュラーエコノミーへの取り組みを始めることで期待できる具体的なメリットについて紹介する。
サーキュラーエコノミーはこれまでのリニアエコノミーとは異なる経済構造である。そのため、サーキュラーエコノミーによる新しい市場が誕生している。サーキュラーエコノミーの市場規模予想は、2030年には4.5兆ドルとされており、まさしく注目の成長市場だ。サーキュラーエコノミーでは、製品の製造のスタート段階から循環を可能にすることを前提にビジネスが構築されている。そのため、関連したビジネスやサービスは新しく創られたビジネスモデルである可能性が高い。サーキュラーエコノミーへの移行が目指されるこの時流は新市場に参入するチャンスであり、技術やイノベーションの新規開発につながる機会だといえるだろう。
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今後、有限資源の枯渇が予想され、資源を利用している企業にとって、代替資源へと移行することは死活問題である。また、原材料を最大限に活かすためにも、原材料を再利用できることは企業にとっても大きなメリットとなる。サーキュラーエコノミーを導入することで、持続可能な資源を確保し、資源不足や価格高騰などのリスクに備えることができるからだ。また、製品寿命を延長することは、循環経済における1つのビジネスモデルであり、利用資源を低減することにもつながる。製品寿命を延長できれば、製造や廃棄物となった製品の処理にかかっているコストだけでなく、製造に必要な資源の削減もできるのだ。このビジネスモデルにおいても、製品を継続した利用を可能にする修理やアップグレードといった新たなサービス創出が期待できる。
サーキュラーエコノミーを実践し、持続可能性の取り組みを推進することは、ブランド価値の向上にもつながる。企業活動に対し、誠実さや公平性を求める消費者や従業員、投資家が増えたことにより、企業がどのような考え方を持っているか、そしてどのような取り組みを行っているかということの重要性が増している。サーキュラーエコノミーに積極的に取り組むことで、地球環境保全への取り組みに興味関心が強い消費者や投資家の支持獲得が期待できるのだ。実際に、循環経済の市場は投資家の注目を集めており、持続可能性への取り組みを行うことは、ビジネスの潮流に乗れているかどうかを判断する指標にもなり得る。
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サーキュラーエコノミーをどのように自社のビジネスに導入し、活用していくべきか考えるための事例をご紹介する。自社の取り組みの参考にしてみて欲しい。
まずは、日本でのサーキュラーエコノミーの取り組み事例について挙げる。日本では、サーキュラーエコノミーに関連する法規制などが現在まだ敷かれていないため、企業の自主的取り組みが中心だ。
総合化学メーカーである三菱ケミカルは、ENEOSとの共同事業において、使用済みプラスチックを石油精製や石油化学の原料へと転換する再生利用の事業化に取り組んでいる。三菱ケミカル茨城事業所に年間2万トンの処理能力を備えた国内最大規模となるプラスチックの油化設備を建設中で、2023年度に廃プラスチックの油化処理を開始することを目指している。廃プラスチックの回収は、資本業務提携をした会社と連携しており、回収されたプラスチックから製造された油は、両社の既存設備で石油製品や各種プラスチックの原料として再製品化されるケミカルリサイクルの循環が実現する。
日本相撲協会とネスレ日本は2023年9月よりサステナビリティパートナー契約を締結しており、両国国技館で回収したネスカフェ紙製パッケージをタオルハンカチへとアップサイクルする取り組みがスタートしている。アップサイクルされたタオルハンカチは、日本相撲協会の所在する墨田区で生まれる新生児の保護者へと贈呈する予定とのことだ。
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日揮グループは、廃プラスチックや廃繊維のケミカルリサイクル、使用済み食用油を用いた次世代航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)製造などに取り組んでいる。循環型経済に役立つ幅広い技術のビジネス化を目指す企業だ。特に、廃プラスチックをガス化し、化学原料へとリサイクルする「ガス化ケミカルリサイクル」では、世界で唯一の長期商業運転の実績がある。将来的には、衣料品やフィルム、ボトルなどのポリエステル製品を廃棄製品や廃棄材料などを活用することで新たな資材として循環させることを目指している。
ユニ・チャームは、2016年より使用済み紙おむつの再資源化に取り組んでいる。鹿児島県志布志市が主体の使用済み紙おむつ再資源化推進協議会に参画。これまで焼却処分するしかなかった使用済みおむつを、破砕、洗浄、分離して、パルプと高分子吸水材(SAP)を再生し、紙おむつを再資源化する事業を開始している。パルプを繰り返し使用できるといった独自の循環システムの構築がなされた例といえる。
キヤノンは資源消費を減らし、「製品to製品」の資源循環を目指している。具体的には、使用済み製品からプラスチックを取り出し、製品の原材料としたり、リユースしたりして資源を活用している。また、複合機やプリンターなど、プリンティング事業における資源循環率を2030年に22年度比で34ポイント増の50%に引き上げることを目標としているなど、意欲的に循環経済へ取り組んでいる企業だといえるだろう。より高い資源循環率を達成するため、リサイクル剤の高付加価値化と再生製品の原価低減の試みも実践している。
ユニクロでは、資源の使用料削減や、リユース、リサイクル促進によって、サーキュラーエコノミーの取り組みを実施している。在庫商品についても廃棄をしない方針を取り、販売後の製品についても回収し、リユース、リサイクルを行っている。リユース品は世界各地の被災地、難民キャンプなどへ寄付し、リユースが難しいものは防音材や固形燃料へリサイクルしている。ダウンは、ユニクロが推進する「RE.UNIQLO」の代表的製品であり、回収したダウンジャケットからダウンとフェザーを新しいダウンジャケットの原材料として活用がなされている。
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日本国外でのサーキュラーエコノミーの取り組みについても紹介したい。サーキュラーエコノミーは欧州を中心に取り組みが広がっているため、企業のほか、国や地域といったレベルでの取り組みがされている。
Tarmac社はインフラの技術会社であるが、英国国内で廃棄される年間約4,000万本ものタイヤに着目し、廃タイヤのリサイクルをスタートさせた。廃タイヤは分解され、ゴムチップとなり、アスファルトの原料として利用される。高速道路1Kmあたり最大750本ものタイヤが利用できる試算がされており、英国から他国へ輸出している年間12万トンのゴム廃棄物を大幅に低減できる見込みだ。
テラサイクル社は、「捨てるという概念を捨てる」というコンセプトのもと、世界初の循環型ショッピングプラットフォーム「Loop」を20ヵ国以上で展開、運営している。従来、コストがかかりすぎてリサイクルが難しかったものを提供された資金を利用して、経済合理性を持たせ、リサイクルを可能にしている企業だ。Loopでは、消費者から容器を回収し、預かり金を返金、容器を仕分け、保管、洗浄して、メーカーへ再利用のために返却している。
英国ロンドンでは、1日約700万杯分の紙のコーヒーカップが廃棄されており、この廃棄を少しでも減らすためのリサイクルキャンペーンとして、#SquareMileChallengeが2017年に行われた。このキャンペーンでは、使い捨てコーヒーカップを市内の回収ボックスにて回収、リサイクルが計画された。ロンドン市内に100か所、ラッシュアワーの時間にはリヴァプールストリートとキャノンストリートの駅にも設置し、100以上のコーヒーチェーンや小売店が参加した。
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サーキュラーエコノミーへの取り組みは、大企業や政府だけでない。サーキュラーエコノミーの新市場へ参入するスタートアップも多くあり、投資家からの援助や、上場に成功している企業も存在する。
アルハイテックは廃アルミから資源やエネルギーを創り出すシステムを研究、開発し、脱炭素を目指すベンチャー企業である。大量消費されているアルミニウムやアルミ付廃棄物を水素へ変換し、新たなエネルギーとして有効活用しようという考えのもと、プロジェクトを進めている。具体的には、水を利用し紙を分離する装置や、特殊な反応液を用いた水素製造装置などを開発しており、水素製造装置の技術は特許も取得している。
ガルデリアは、地球と全生物に最適なエコシステムを確立するという目的のもと、硫酸性の温泉に生息し、金属を吸着させる性質を持つガルディエリアという藻類を活用した貴金属回収事業を展開している。対象の貴金属は金やプラチナ、パラジウムなどで、使用済み家電から回収し、有価金属のリサイクル率を高めている。また、小規模天然金鉱山で活用できる金回収プロセス開発にも取り組んでおり、安全に鉱石から金を取り出す技術で環境汚染や金鉱山で働く人々のサステナビリティへの寄与を目指している。
fabulaは、ゴミから感動をつくるをキャッチフレーズに、規格外野菜や端材など、さまざまな食品廃棄物に乾燥、粉末化、熱圧縮といった加工を加えることで、新素材を作る企業である。たとえば、白菜の廃棄物から作った素材はコンクリートの約4倍の曲げ強度を持っており、将来的には建材などへの使用が期待されている。廃棄や肥料化リサイクルにもコストがかかる食品廃棄物を利用し、新たな価値を創造する事業に取り組んでいる例といえるだろう。
レコテックは、環境コンサルティング会社であり、東京都内の商業施設を対象にプラスチックごみの回収、リサイクルを行う「POOL PROJECT TOKYO」を実施している。事業が東京都にも認められ、現在は共同してプロジェクトが進められている。レコテックのこの事業では、回収した廃プラスチックの高度マテリアルリサイクルを行い、PCR材の「POOL樹脂」を製造し、プラスチック原料を利用する製造業者へと販売がされており、バリューチェーンが構築されている点が特徴といえるだろう。環境負荷が少ないPOOL樹脂の普及とともに、回収拠点を全国へ広げることで、廃プラスチックの高度リサイクルの拡大を目指している。
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サーキュラーエコノミーは、経済成長とともに社会的目標であるサステナビリティを実現することができる経済システムだ。資源利用を削減し、循環的利用をすることは、環境問題の面だけでなく、資源調達リスクの上でも取り組むべき喫緊の課題だ。サーキュラーエコノミーへの移行はこれからの市場で生き残るためにも必須といっても過言ではない。すでに実践している企業例を知り、自社の取り組みに活かすためにも、多くの事例を学ぶことが大切だといえるだろう。
参考記事
・三菱ケミカル株式会社「持続可能な成長をめざすサーキュラーエコノミー」
https://www.m-chemical.co.jp/csr/activities/case5.html
・PRTIMES「ネスレ日本、日本相撲協会とサステナビリティパートナー契約を締結」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000362.000004158.html
・日揮ホールディングス株式会社「資源循環」
https://www.jgc.com/jp/business/resource-recycling/
・ユニ・チャーム株式会社「図解でわかるユニ・チャーム紙おむつリサイクル」
https://www.unicharm.co.jp/ja/csr-eco/education.html
・株式会社ユニクロ「RE.UNIQLO」
https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/sustainability/planet/clothes_recycling/re-uniqlo/
・テラサイクル「Loop」
https://exploreloop.com/ja/
・経済産業省「サーキュラーエコノミー スタートアップ事例集」
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/shigen_jiritsu/pdf/007_06_00.pdf
・レコテック株式会社「プラスチック資源を循環させるPOOL事業を、東京都全域に拡大開始」
https://recotech.co.jp/pool_project_tokyo/