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技術経営(MOT)の重要性とは?メリットや導入方法、具体的な事例を紹介

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製造業にとって技術は利益の源泉であり、事業成長を継続させるためには効率的に技術開発を行っていく必要がある。技術経営は技術競争力の向上を目指した経営手法であり、製造業には欠かせない重要な考え方だ。今回は、技術経営について解説していく。

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 技術経営とは

技術経営(MOT)とは、Management of Technologyの頭文字を取った単語であり、「自社の技術や開発力・知識をベースに、新たな技術開発とイノベーション創出を行っていく経営手法」を指す。

 技術経営の意味

技術経営は「技術を活かした経営」とも言われ、企業が持つ科学や工学といった技術的な知識を、いかにして経済的価値を生む新規事業や新製品に転換するか、また既存技術を強化していくか、戦略を構築するものだ。技術を核とする製造業において真価を発揮する経営方法であり、研究開発投資額が大きいにも関わらず、技術の事業化・製品化につながりにくい日本の現状を考えれば、取り入れるべき考え方だと言えるだろう。実際に、技術経営はすでに欧米諸国では重要視されており、技術や事業開発の効率化、マネジメントに活かされている。

 技術経営の成り立ち

技術経営は、1981年にマサチューセッツ工科大学のビジネススクール内に修士号が取得できる派生コースとして“Management of Technolgy(MOT)”が設置されたことが始まりとされる。1980年代の米国では、日本の製造業の台頭による国際競争力の急激な低下が課題視されており、技術経営プログラムが米国内で拡大する契機になったようだ。日本においては2002年度より経済産業省主導で「技術経営人材育成プログラム導入促進事業」が始められており、米国より20年も遅れて技術経営導入のスタートがなされた。

 MBAとの違い

MBAは経営に関わる学位であり、Master of Business Administrationの頭文字から取られ、経営管理修士号と訳される。MBAでは経営学に関する全般的な知識の取得が目指され、具体的には経営戦略やマーケティング、組織論といった企業や事業を運営していく中で必要な知識を学ぶ。MBAもMOTも経営学の専門領域であるため、この二つはしばしば混同されがちだが、MBAは事業化ステージのうち後段の「事業化」「産業化」を、MOTはその前段となる「研究」「開発」を事業化を見据えながら進める点が大きく異なる。

 技術経営の重要性

情報通信網の発達などによりグローバル化が進む現代において、経済環境は急速に変化し続けている。開発した技術はすぐにコモディティ化し、同質の製品が市場にあふれる上に、技術や市場の変化のスピード自体も著しい。厳しい状況下において新たな市場を切り拓くには、新規性の高いコンセプトを見つけ、技術やアイデアといったプロダクト以前の無形から価値創出を行っていく必要がある。また、技術を磨くだけでなく、ビジネスモデルの見直しや市場と顧客理解を深めることが出来なければ、ビジネスでの成功は難しいといえるだろう。

さらに現代の技術は細分化・高度化しており、自社の持つ技術をポートフォリオとして管理することも欠かせない。特に日本においては、「死の谷」に落ちる研究開発テーマがあると回答する国内製造業が約8割というアンケート結果が出ていることから、研究開発の成果を活用できていない事例が多いといえる。
技術経営を取り入れることで、技術と経営を結びつけたマネジメントが可能になり、イノベーション創出や技術活用の最大化が期待できる。

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 技術経営のメリット

技術経営では自社の技術から事業を考え、研究成果を経済的付加価値に転換することが可能になる。ここでは、技術経営を導入するメリットについて具体的に紹介する。

 目指すべき方向性や経営方針を明確にできる

技術経営では自社技術といった自社アセットを活用することが大前提だ。技術の棚卸しなどを行い、経営戦略を策定するため、自社の注力すべき製品やサービスが見えやすくなり、これからの経営方針についても指針が定めやすくなるだろう。

技術革新や加速する市場変化についていこうと無闇な新規事業開発などを行ったり、曖昧な戦略のまま多角化経営を始めたりしてしまうと、成功している事業にも悪影響が出る恐れがある。市場競争で生き抜く戦略が立てやすくなることは大きなメリットだといえる。

 競争力が向上する

技術経営の導入により、技術ありきの経営戦略が一貫性を持って立てられるようになるため、研究開発と事業化や産業化といったステージ間の分断が防がれ、より高品質な製品やサービス提供を行えるようになる可能性が高くなる。戦略性の高い研究開発ができるようになれば、イノベーション創出や事業化の効率も高まり、企業の競争力向上にも寄与するだろう。また、戦略的にノウハウや知識の蓄積がされることは、業務効率の改善やさまざまなコスト削減といった現場のメリットだけでなく、社内の資産としての価値が大きい。

 収益を向上させることが可能

技術経営では自社の技術力を高度に活かし、技術と一貫性のある経営戦略に従って新規価値性のある製品やサービスを開発していく。従来の日本の研究開発のスタイルよりも市場ニーズにマッチする可能性が高く、結果的に企業の利益率の向上にもつながるだろう。

また、事業の立ち上げや研究開発のプロセスについても、全体を見通した上で戦略を策定し、各ステージにおいて効率化を進めるため、時間的にも、経済的にもコスト削減が可能だ。この点からも収益向上にプラスの影響を与えることができる。

 新規事業の創出も可能

技術経営を導入する大きな目的として、現在の急速に移り変わる市場変化に対応できる力を持つこと、ひいては技術力を向上させ、市場での競争力や優位性を高めることが挙げられる。技術経営では技術に着眼する点から、核なる技術の発展、そのほかの技術との掛け合わせが期待でき、新しい製品やサービスの研究開発につながりやすい。また、競争力向上のためには新規事業の創出も重要な要素であるが、技術経営によって技術を成長、発展させる研究や技術開発への投資効率を最大化することで、新規事業に投下できる資金や人材を確保しやすくなる。つまり、価値ある新規事業を創出するための環境構築ができる点も、技術経営のメリットとして挙げられる。

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 技術経営の導入方法

実際にどのようにして技術経営を企業経営に導入するかについて解説する。研究開発を行う立場であっても、マインドセットを新しくすることで現在の研究に活かすことができるだろう。

 技術的な強みを明確にして軸を決める

技術経営を実際に導入するには、まずは自社の技術的強み、つまりコアコンピタンスを明確にすることが欠かせない。自社独自かつ他社との差別化を図る上で最も重要なコアコンピタンスを把握して、自社の経営の軸を決定することが第一のポイントだといえる。

また、技術経営のために、自社技術については詳細に管理、マネジメントを行う必要がある。例として、保有する知的財産のほか、現在特許化せずにブラックボックス化させている技術などの知的財産権についても戦略的なマネジメントをしなくてはならない。自社の強みを維持しつつ、注力する分野を見定めることで新たな価値を生みだすことが出来るのだ。

また、自社のコアコンピタンスが何であるか検討する上で、「模倣可能性」「移転可能性」「代替可能性」「希少性」「耐久性」に着目して内部資源を見直すことが肝心だといえる。コアコンピタンスを見誤ってしまうと人材や資金といった資源の分散、技術発展機会の喪失など、事業経営にとってマイナスの影響が出てくる可能性があるため注意が必要だ。

 必要となる人材を確保する

技術経営を実践するためには人材確保も重要だ。技術経営の考え方に基づいた経営やビジネスの知識、実践力、ノウハウなどを持つ優秀な人材がいなければ、早急な導入や実践は難しい。技術経営も経営学の専門領域のひとつであるため、同様に経営学の学位であるMBAの取得者やコンサルタント経験のある者が人材として相応しく、スムーズに技術経営を進めるためには必要不可欠といえる。ただし、1980年代より技術経営プログラムが始まり、発達した米国などと比べ、日本国内においては人材そのものが少ないという点には留意したい。

 プロジェクトチームの構築

技術経営を実践するために必要な人材を中心に据えたプロジェクトチームを構築し、実際に戦略策定を行っていく。チーム構築のみならず、組織全体の再編が必要な場合もあるだろう。組織再編については、既存の人材の配置換えだけでなく、中途採用といった外部からの人材の確保も考えるべきだ。また、人材以外に、技術についても外注や他社との協業などを利用して、自社だけでは補えない場合は広い視野を持って検討することが必要だろう。さらに、技術を核にして経営を行っていく点からも、技術の継続的な成長だけでなく、社内共有や、技術活用、または開発のできる人材の社内育成という視点も重要だ。

 目標値の設定や行動計画に落とし込む

前述のプロジェクトチームを中心に技術経営に基づいた経営戦略を策定し、経営方針に反映させた後、実際の中長期経営計画を作成する。注力する自社技術や分野など、これからの事業の方向性やリソース配分を具体的な目標や数値設定を行うことで、行動に落とし込んでいく。中期での目標達成度合いのチェックはもちろん、短期経営計画を作成し、より細かい頻度で見直していくことが適している場合もあるだろう。大切なポイントは、決めた期間の中での成果を確認し、課題の抽出を行い、都度フィードバックを行うことで計画を最適化していくことである。

 まとめ

技術経営は、今後ますます市場競争が熾烈になるだろう経済社会において、これからの日本の製造業が生き残っていくためには欠かせない経営の考え方だといえるだろう。技術経営を活かすためにも、まずは自社のコアコンピタンスを明確にし、自社アセットを見直すところから始めることをおすすめする。

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